About us       情シスのじかんとは?

ビジネスとテクノロジーの融合が未来を拓く「BTCONJP 2024 情シスカンファレンス」参加レポート

2024年10月12日(土)、東京都紀尾井町のLINEヤフー株式会社本社にて、一般社団法人日本ビジネステクノロジー協会が主催する「Business Technology Conference Japan」、通称「BTCONJP」が開催されました。

         

メイン会場の様子。客席はほとんど満席に

12,000ユーザーを超える情シスコミュニティ「情シスSlack」の有志が運営する本イベントは、情報システム部門の最新動向や重要トピックを学べる国内最大級のカンファレンスとして、今年で2回目を迎えました。今回は初のハイブリッド開催として、オフラインとオンラインの両方で実施。

「ビジネスとテクノロジー」をテーマに全国の情シス担当者が集まり、今後のビジネス戦略を考えるための素晴らしい機会となりました。

本記事では、当日の「情シスのじかん」チームが参加させていただき、講演内容やそこから見えた今後の情報システム部門の未来について紹介します。

BTCONJP 2024とは?

「BTCONJP 2024」公式HPより画像引用

「BTCONJP 2024」は、「ITをビジネステクノロジー(BT)の領域に昇華し、日本のあらゆる経済活動をアップデートする」というビジョンを掲げ、国内最大級12,000ユーザーを擁する情シスコミュニティ「情シスSlack」の有志によって運営されているイベントです。

2回目となる今回は、「IDENTITY」「DX & AI」「DEVICE MANAGEMENT」「ZERO TRUST」「CYBER SECURITY」「BUSINESS TECHNOLOGY」の6つのテーマで、招待スピーカーと公募スピーカーによるセッションが展開されました。

主催者である情シスSlackコミュニティの有志による準備も非常に綿密で、開催前から盛り上がりを見せていました。

ビジネステクノロジー分野のスペシャリストが集結

メインセッションのスケジュール

当日の会場は大盛況。メイン会場では各スピーカーによるセッションが行われたほか、サブ会場ではスポンサーブースやコーヒーコーナーの出展も。

サブ会場の様子。スポンサーブースが立ち並び、盛り上がりを見せていた

メインセッションでは、ビジネステクノロジー分野のスペシャリストによるさまざまな切り口の話題が展開されました。本記事では、一部をご紹介します。

「巨大企業でDX革新を起こすということ」イオン株式会社CTO 山﨑賢氏

トップバッターは、イオン株式会社のCTOである山﨑賢氏。同社のDX推進に向けた取り組みについて紹介しました。

山﨑氏は、イオン株式会社とイオンスマートテクノロジー株式会社のCTOを兼任しており、過去にはYahoo! JAPAN(現LINEヤフー株式会社)やリクルートなどの企業で経験を積んできました。

イオンのDX推進において重要な役割を果たす「イオンスマートテクノロジー」は、グループ全体のデジタル化を加速させるためのミッションを持っている会社です。現在、イオンは300社以上の子会社を持つグループであり、その多くの企業が個別のアプリを運用していました。そこで、それぞれのアプリのIDを統合することで、データを横断的に分析できる環境を構築したと説明しました。そんなイオンの「iAEON」アプリは1,000万ダウンロードを突破し、顧客データの一元管理が進められています。

また、営業収益が10兆円を超える見込みであり、従業員数が約60万人に達するイオンが「Japanese Traditional Company(JTC)」としてDXに取り組む意義について語りました。日本の大企業がDXを進める上で直面する課題を正面から捉え、「レガシー企業をネガティブに捉えるのではなく、歴史的成功企業としての価値を再認識すべきだ」と強調しました。

セッションの終盤では、情報システム部門の役割についても言及。「情シス」という言葉にどこかレガシーな響きが含まれていることについて触れた上で、情シスは、単なるPC管理やネットワークの保守の範囲を超え、社内ITの改革を通じて会社全体の生産性を向上させるポテンシャルを持つことが大切だと述べました。情シスの役割は、ITツールや仕組みの導入を通じて生産性を向上させることにあり、それが企業のDX推進においても大きな貢献となると伝えました。

「大企業や情報システム部門も含めて、変化の基準は着実に高まってます。既存のプロセスや反対勢力、サイレントマジョリティに飲まれず、結果にスコープを当てて動いていただきたいと思っています」

山﨑氏の話は、イオンが目指す未来像や具体的な施策を示しつつ、情シス部門のポテンシャルを前向きに捉える内容でした。最後は「失敗したって死にはしない」「周りを見てください、同士ばかりだよ」と情シス部員に励ましを与える言葉で締め括られました。

「Entra IDへの認証基盤統合からCopilot for Securityの活用まで」株式会社集英社 須藤明洋氏

次に、株式会社集英社のIT戦略企画部、須藤氏のセッションがスタート。

須藤氏は、1926年創業の総合出版社である集英社に勤めており、ファッション、小説、漫画、アプリ開発など、多岐にわたるコンテンツビジネスに携わってきました。セッションでは、同社のIT基盤整備についての取り組みを紹介しました。

須藤氏は、集英社で運用されていた複数の認証基盤を統合し、SSOを実現した経緯について詳しく説明。もともとは複数の基盤が混在し、ユーザーの利便性やセキュリティの面で課題がありました。そこで、認証基盤をEntra IDに統合し、さらにパスワードレス認証の導入を進めた結果、ユーザーの利便性向上とセキュリティ強化を実現しました。

さらに、須藤氏は認証基盤の統合によるセキュリティ強化についても触れました。認証ログを集約し、監視体制を整えたことで、不審なアクセスの検知やユーザー行動の可視化ができるようになったと述べています。

また、AIの活用に関しても触れ、AIを用いたインシデント管理やセキュリティ強化について説明がありました。セキュリティ人材の確保が難しい中、AIを活用することで社内セキュリティの向上と運用の効率化を進めています。須藤氏は、将棋の例を挙げ、プロ棋士がAIを活用して強くなるように、情報システム部門もAIを活用することで業務を進化させる必要があると述べました。

須藤氏は、このような取り組みを通じて「情シス業務を楽にすることで、情シスメンバーの笑顔を増やすことが大事だ」と強調。IT基盤の整備が組織全体の生産性向上に寄与し、最終的には情シスメンバーの働きやすさややりがいにつながるとし、情シスとしての取り組みの意義を伝えてセッションを終えました。

「NIST Cyber Security Framework 2.0 と日本における新たなITガバナンスの潮流 」ジョーシス株式会社 川端隆史氏

続いて、ジョーシス株式会社のシニアエコノミスト、川端隆史氏によるセッション。NIST(米国立標準技術研究所)が策定した「NIST サイバーセキュリティフレームワーク(NIST Cybersecurity Framework:NIST CSF)」バージョン2.0の意義について説明しました。

川端氏は、ジョーシス株式会社での役割に加え、これまでスタートアップや大企業、さらには外務省での経験を積んできた背景があります。アジアのサイバーセキュリティと新興国でのリサーチャーとしての経験を活かし、日本のITガバナンスにおける課題と可能性について語りました。

セッションの中で川端氏は、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)が策定した「NIST CSF 2.0」がどのように企業のITガバナンスに影響を与えるかについて言及しました。特に、日本政府が情報セキュリティに対して神経を尖らせている背景や、国際政治の動きがサイバーセキュリティの重要性を高めていることを強調しました。

また、NIST CSF 2.0では、サプライチェーン全体を守るという考え方が強調されており、中小企業も対象として含まれるようになったことが述べられました。これにより、サプライチェーンに属するすべての企業がセキュリティ対策を講じる必要があり、特にソフトウェアサプライチェーンの安全性確保が求められていると川端氏は説明します。

さらに、川端氏は国際政治とサイバーセキュリティの関係についても触れ、米中関係の緊張やウクライナ戦争がサイバー空間におけるセキュリティの重要性をより高めていると指摘。このような国際的な動きが、日本国内のITガバナンスにも大きな影響を与えていると述べました。

また、日本政府も近年、サイバーセキュリティ対策を急速に強化しており、特に「セキュリティクリアランス」や「サイバー格付け」といった制度が導入されつつあることに言及しました。こうした動きから、企業は情報セキュリティの対応レベルを可視化し、取引先との信頼を築くことがますます重要になってきています。

最後に、川端氏は経済安全保障の時代において、企業が競争力を維持するためにも情報セキュリティの取り組みを強化し、それを対外的にアピールすることが大切であると強調。また、現場の従業員がより重要な業務に集中できるよう、経営層が環境を作ることの必要性についても触れていました。

川端氏のセッションは、国際的な視点から見たサイバーセキュリティと日本におけるITガバナンスの未来を示す内容でした。

最後に:情シス部門の未来に向けて

参加者が自由に書き込めるクリエイティブボードの設置も。写真はイベント序盤に撮影したもの

3社のセッション後も「BTCONJP 2024」は続き、最後には一般社団法人日本ビジネステクノロジー協会 岡村 慎太郎氏のクロージングセッションも。すべてのセッションが終了した後には、懇親会も開催されました。

「BTCONJP 2024」は、情シスをさまざまな視点から見直し、現在の情シスの必要性をより深く認識させられる、そんな機会となるイベントでした。
今年のイベントが大成功で終了したことを受け、主催者は既に来年の準備に向けて動き出しているようです。

「BTCONJP 2025」は2025年11月15日(土)に開催される予定。興味のある情シス関係者は、予定を空けておくことをおすすめします。また、年明け頃からプロポーザル(※技術カンファレンス用語で、「こんなことを発表したいです」という「提案」を指す言葉)を募集するとのこと。

イベント後は懇親会を行われた

次年度も期待に満ちたイベントになること間違いありません。

(取材・TEXT:七瀬ユウ)

   

関連記事Related article

       

情シスのじかん公式InstagramInstagram

       

情シスのじかん公式Instagram

30秒で理解!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

close close