About us 情シスのじかんとは?
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2024年5月16日、AWSジャパンが、2024年4月30日からアメリカでの一般提供がスタートした生成AIサービス「Amazon Q」について、日本初の説明を行いました。詳しいところは後述しますが、Amazon Qは、社内情報検索や業務資料作成、コーディング、セキュリティスキャンなど、さまざまな業務で役立つサービスです。
なお、現時点でAmazon Qの日本語版は提供されていません。しかし、同社サービス&テクノロジー事業統括本部の小林正人本部長が次の発言をしていることから、将来的には日本語版が提供されると考えられます。
AWSはお客様の要望に基づいてサービスを開発しており、Amazon Qに対しても、日本語対応の要望を多くもらっている。現時点では時期が明確にできない |
※引用:インターネットウォッチ「AWS、一般提供開始した生成AIサービス「Amazon Q」、および「Bedrock」と今後の戦略を説明」
ここで、Amazon Qと深い関係にある「生成AI」について簡単に解説します。
生成AIとは、あらかじめ学習した大量のデータにもとづいて、ユーザーが求めている情報・コンテンツを瞬時に生成するAIシステムのことです。「日本の三大都市は?」と入力したら、「東京、大阪、名古屋」と出力する。「次の文章を要約してください」と入力したら、ポイントを抽出して端的にまとめた文章を出力する。そのような仕組みです。
一般的な生成AIサービスとして、「ChatGPT」や「Microsoft Copilot」、「Claude」などが有名です。この生成AIは、主に次のようなシーンで活用されています。
・情報収集
・メール文の雛型作成
・Web記事要約
・英文翻訳
・プログラムコード作成
・献立案の作成
・新企画のアイデア出し
Amazon Qは企業向けの生成AIサービスで、「Amazon Q Business」や「Amazon Q Developer」、「Amazon Connect」、「AWS Supply Chain」など、複数のサービスで構成されています。
ここで、2つのサービス、「Amazon Q Business」と「Amazon Q Developer」について簡単に解説します。
Amazon Q Businessは、一般ビジネスマン向けの生成AIアシスタントです。
・社内規定
・業務マニュアル
・技術情報
・製品情報
・契約書
・顧客情報
・問い合わせ履歴
・研修教材
このような社内にあるあらゆる情報を学習した上で、社員の業務をサポートします。
例えば、「弊社の新製品〇〇の発売時期はいつですか?」「図書室の利用方法を教えてください」といった質問に瞬時に回答します。また、「技術情報にあるこの部分を要約してください」「問い合わせ履歴をもとにWebサイトにアップするFAQを作成してください」といったタスクにも対応可能です。
結果として、社員の業務効率が大幅に向上します。
[Amazon Q Businessの利用料金]
・Amazon Q Business Lite:1ユーザーあたり月額3ドル
・Amazon Q Business Pro:1ユーザーあたり月額20ドル
社員の業務効率化を促す仕組みを導入することも、情シス社員の仕事のひとつです。社員の業務効率に課題のある企業は、このAmazon Q Businessが役立つかもしれません。
Amazon Q Developerは、ソフトウェア開発者向けの生成AIアシスタントです。
ソフトウェア開発に関するあらゆる情報を学習しており、次のようなソフトウェア開発業務をサポートしてくれます。
・コーディング
・テスト
・デバッグ
・セキュリティスキャン
・コードの変換(既存のコードを最新の技術に合わせて更新するなど)
[Amazon Q Developerの利用料金]
・Amazon Q Developer Free Tier:無料
・Amazon Q Developer Pro Tier:月額19ドル
自社開発企業(自社のシステムやサービスを自社で開発している企業)の場合、情シス自らがソフトウェア開発を行うこともあるでしょう。ソフトウェア開発で課題を感じている場合、このAmazon Q Developerが役立つかもしれません。
繰り返しになりますが、Amazon Qは企業向けの生成AIサービスであって、ChatGPTなど一般的な生成AIサービスとは異なります。そこで気になるのが、「情シス社員として、Amazon QとChatGPTなど一般的な生成AIサービス、どちらを選ぶべきか? そこにはどのような判断基準があるか?」といった点ではないでしょうか。
もちろん、一概にはいえませんが、「社内情報活用において課題があるか」「ソフトウェア開発において課題があるか(自社開発企業の場合)」「既にAWS系サービスを利用しているか」「セキュリティを重視するか」、このあたりが判断基準となると考えられます。
繰り返しになりますが、Amazon Q Businessは社内情報活用に役立つサービスです。通常、一般的な生成AIサービスでは同じようなことはできません。そのため、社内情報活用において課題がある場合、Amazon Qの導入を検討してみる価値があるでしょう。特に社内情報が膨大にある企業や社内情報が整理されていない企業などで役立つと考えられます。
繰り返しになりますが、Amazon Q Developerはソフトウェア開発に役立つサービスです。一般的な生成AIサービスでもソフトウェア開発に対応可能ですが、専用の生成AIサービスには及びません。機能的・精度的に限界があります。そういった意味で、ソフトウェア開発において課題がある場合、Amazon Qの導入を検討してみる価値があるでしょう。特に開発者が少ない企業、新人開発者の割合が多い企業などで役立つと考えられます。自社開発に挑戦してみたい企業にもおすすめです。
Amazon Qは、他のAWS系サービスと統合・連携させることができます。同じプラットフォーム、同じ操作感で利用できますし、データ共有も簡単です。そのため、既にAWS系サービスを利用している企業の場合、Amazon Qの導入を検討してみる価値があるでしょう。
AWS系サービスは、通販サイト「Amazon.com」の運営でつちかってきた技術・ノウハウをもとに開発されていることをご存知でしょうか。Amazon.comの運営では、膨大な量の顧客情報を厳重に管理してきた実績があり、セキュリティ分野で定評があります。セキュリティを重視する企業の場合、Amazon Qの導入を検討してみる価値があるでしょう。
Amazon Qについて解説してきました。Amazon Qについて気になった情シス社員の方もいらっしゃるのではないでしょうか。Amazon Q Businessには無料トライアル(利用ユーザー数・利用期間に制限がある)が、そしてAmazon Q Developerには無料プランがあります。ぜひチェックしてみてください。
なお、無料版を使ってみても、導入するかどうかの判断に迷ってしまう場合もあるかと思います。その場合は、あえて様子を見るという手もあります。Amazon Qは比較的新しい製品です。新しい製品には性能不足や使い勝手の悪さ、不具合、バグがつきものですが、時間が経つにつれて改善されていく傾向があります。また、ユーザーの体験談情報も時間が経つにつれて増えてくるでしょう。
Amazon Qの導入にも費用や時間がかかります。自社のニーズにあった選択をするために、あえて様子を見ることも大事です。また、今は生成AIサービスが次々と登場してきています。これを機に生成AIサービスに関する情報を集めてみてはいかがでしょうか。
生成AIは非常に便利なツールです。これから生成AIありきの時代になっていくと考えられます。ある意味、”生成AIも人材”であって、「どの生成AIサービスを採用するか?」、これが企業の命運を左右すると言っても過言ではありません。社内のIT全般を担う情シス部門にとって、生成AIサービスに関する情報収集を行うこと、比較検討を行うことなども重要な業務の一つといえるでしょう。
なお、ここで注意点があります。通常、ある生成AIサービスが、他の生成AIサービスを推奨することはありません。そのため、生成AIサービスに関する情報収集・比較検討は、自社の人間で行うことが基本となります。これは、AIが万能ではないことの一例です。生成AIありきの時代では、生成AIが対応しにくい部分に企業努力の余地があります。
Amazon Qは、Amazon Web Servicesが提供する企業向け生成AIサービスです。社内情報活用やソフトウェア開発などで役立つ機能が備わっており、他のAWS系サービスとの連携性にも優れています。社内情報活用やソフトウェア開発に課題のある企業、既にAWS系サービスを利用している企業、セキュリティを重視する企業などにおすすめできます。なお、現時点では日本語に対応していませんので、この点についてはご注意ください。
これから生成AIありきの時代になっていくと考えられます。本記事が、Amazon Qを含めた生成AIサービスの理解を深めるきっかけとなれば幸いです。
著者:松下一輝
大学院修了後、ITエンジニアとして大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを顧客とする部署に配属され、業務システムやWebアプリケーションなどの設計・開発業務に従事する。その後、文章を書く仕事に興味を持ち、ライターに転身。ITやサイエンス、ビジネスといった分野の記事を執筆している。
(TEXT:松下一輝 編集:藤冨啓之)
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