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情シスの人材不足が70%超。現場から見た長年の課題を克服できない根本的原因は-情シスの「目」ニュース

多くの情シス部門では、慢性的な人材不足が課題となっています。「なかなか人が来ない」「何年も後輩ができない」などのお悩みを持つ情シス担当者も多いのではないでしょうか。

慢性的なIT人材不足の裏には、企業が求める人材像と応募者のミスマッチだけではなく、情シス部門の位置づけや評価といった構造的な問題も隠れています。

本記事では、DX部門・情シス部門の人材不足の現状について調査レポートを基に紹介するとともに、情シス現場の慢性的な人材不足の原因や人材不足解消に向けたポイントについて解説します。

■情シスの「目」ニュース「キャッチアップポイント」

①70%超の現場が人材不足を痛感し、DX部門・情シス部門が特に顕著
②情シス部門の人材不足の背景には、多岐にわたる業務範囲や情シス部門に対する認識の低さなどの課題が存在
③人材不足の解消に向けては、業務の可視化やアウトソースの戦略的な活用、経営におけるITの重要性の共通理解などが重要

■情シスの「目」ニュースとは?

月曜日の朝にお送りする「情シス『目』ニュース」では、日々発信されるさまざまなトピックスを情シス・エンジニアの方々向けに「再解釈」した情報を掲載中。AI、働き方、経済など幅広いニュースをピックアップし、業務に役立つほか、つい同僚に話したくなる面白い話題まで身近で自分事化しやすくお届けします。

         

DX部門・情シス部門中心にIT人材不足が深刻な課題

はじめに、DX部門・情シス部門中心にIT人材不足が深刻となっている課題について、株式会社インターネットイニシアティブの調査レポートを参考に解説します。


70%超の現場が人材不足を痛感

株式会社インターネットイニシアティブは、企業の人材に関するアンケートを実施し、その結果を「情シス・DX部門の人材不足に関する調査」として公開しています。同調査によると、70%を超える現場が人材不足を感じており、特にDX部門や情シス部門でその傾向が強いことが判明しています。

※出典:株式会社インターネットイニシアティブ「IIJ、企業の人材に関する実態調査アンケート結果を公表」

現状の採用経路では十分なIT人材の確保は困難

人材不足を埋めるための手段としては、現在では「キャリア・中途採用」が約半数を占め、人材採用方法の主流となっています。しかし、現状の採用経路において人材をある程度補充できると感じている企業は、全体の3割以下と低い結果となっているのが実情です。

DX部門・情シス部門は、一般事務職やマーケティング職に次いで補充が困難な結果となっているため、採用面においても厳しい現状がうかがえます。

※出典:株式会社インターネットイニシアティブ「IIJ、企業の人材に関する実態調査アンケート結果を公表」

人材不足の課題を克服できない原因

情シスの人材不足が長年解消されない原因は、人数だけの問題ではなく、構造的な課題にも根差していると考えられます。主な原因として、以下の2点について述べていきます。

業務範囲の増大と求められるスキルの変化

従来の情シス部門の主な役割は、基幹システムやインフラを安定稼働させる「守りのIT」でした。しかし現在では、その役割に加えて、クラウド管理や多様なSaaSの導入・運用、高度化するセキュリティ対策、DX推進・データ活用といった「攻めのIT」も上乗せされています。

求められるスキルも、インフラ知識やクラウド、セキュリティ、データ分析、業務改革の知見など大幅に増大し、担当者1人あたりの業務負担が大きくなっているのが現状です。業務の棚卸しや役割分担がされないまま仕事が増え続ける構造が、現場の人材不足が解消されない原因の一つであるといえます。

「コストセンター」の位置づけと評価のミスマッチ

業務範囲が増大する一方で、多くの企業では情シス部門が未だに「コストセンター」としか認識されていない点も原因として考えられます。DX推進が重要な取り組みでありながら、そのために不可欠な人員増や予算増、最新ツールへの投資がなかなか付いてこないというジレンマに悩まされる担当者も少なくないでしょう。

日々のシステムの安定稼働は評価の対象にされにくく、事業に貢献する新規提案に関しては投資対効果の説得が難しいため、正当な評価や報酬につながりにくい一面もあります。

いわば「貢献は求められるが評価と投資はされない」という構造が、情シス担当者のモチベーション低下や優秀な人材の外部流出、採用難といった要因を生んでいるのではないでしょうか。

情シスの人材不足解消に向けたポイント

先に述べた課題を一朝一夕で克服することは容易ではありませんが、情シスの人材不足解消を実現していくためには、次のポイントを押さえた地道な取り組みが重要です。

業務の可視化とアウトソースの戦略的な活用

業務量の調整に向けて、情シス担当者の業務を客観的なデータで示すことが重要です。全ての業務を洗い出して工数を記録し、何にどれだけ時間がかかっているかを可視化しましょう。その上で、「この定型業務はRPAで自動化できる」「このインフラはSaaSに移行すれば運用負荷が下がる」「ヘルプデスクは専門業者にアウトソースする」といったように、自分たちがやらなくてもよい仕事を明確に切り分けます。

自分たちで全てやるという従来の慣習を見直し、外部の力を戦略的に活用することで、本来注力すべき「攻めのIT」や業務改善のための時間を創出できるようになるでしょう。

ITの価値を「経営の言葉」で伝える

コストセンターの位置づけから脱却するためには、情シス部門がITの価値を正しく社内に伝え、評価の土俵に上がることが不可欠です。「サーバーのCPUが…」といった技術の話ではなく、「このセキュリティ対策で、年間X万円の事業機会損失リスクを回避できます」のように、経営層が理解できる言葉(売上、コスト、利益、リスク)に翻訳して説明することが重要です。

同時に、大きなDX構想だけでなく、特定の部署の課題を解決する小さな成功事例を積み重ねることもポイントです。現場から「情シス部門のおかげで助かった」という声を増やすことが、中長期的に大きな実績となるでしょう。

こうした地道な価値の証明が、経営層の認識を変え、IT部門を「コスト」ではなく「投資」対象として見なさせる力になるはずです。

まとめ

多くの現場がIT人材の慢性的な不足を痛感しています。IT人材不足の背景には、情シス担当者の業務範囲の増大や求められるスキルの変化、情シス部門への認識の低さといった構造的な課題が存在します。

IT人材不足を解消していくためには、業務の可視化やアウトソースの戦略的な活用が必要です。また、経営におけるITの価値を正しく発信し、経営層をはじめ全社的な協力を得ていくことも重要となるでしょう。

著者:まにほ

大手SIerおよび大手メーカーの情報システム部門で実務経験を積み、現在はITライターとして独立。DX・IT・Webマーケティング分野を中心に多数の記事やコラムを執筆。ITストラテジスト、プロジェクトマネージャー、応用情報技術者などを保有。

(TEXT:まにほ、編集:藤冨啓之)

 

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参照元

IIJ、企業の人材に関する実態調査アンケート結果を公表|株式会社インターネットイニシアティブ

 

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