About us 情シスのじかんとは?
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金融庁が発表した「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(案)」は、金融機関におけるサイバーセキュリティ対策を根本的に見直し、強化するための重要なフレームワークです。このガイドラインは、国内外のサイバー攻撃がますます巧妙化・多様化する中で、金融業界全体におけるリスク管理のレベルを引き上げることを目的としています。
「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(案)」が策定された背景には、金融機関を取り巻くサイバー脅威が急速に拡大している現状があります。近年、金融業界を標的としたサイバー攻撃は高度化し、攻撃者はますます巧妙な手口を駆使して金融機関のシステムや顧客情報を狙っています。特に、ランサムウェア攻撃やフィッシング詐欺など、直接的な金銭的被害や信用の失墜を招くインシデントが多発しています。このようなリスクが高まる中、金融庁は金融機関全体でサイバーセキュリティ対策の標準を引き上げ、セキュリティ意識の徹底を図るため、このガイドラインを策定しました。
このガイドラインの目的は、金融機関がサイバー攻撃に対してより強固な防御体制を構築することにあります。具体的には、システムの脆弱性を最小限に抑えることや、インシデント発生時に迅速かつ適切に対応できる体制を整えることが求められています。さらに、金融機関内部だけでなく、取引先やサプライヤーなどの外部関係者にもセキュリティを徹底するよう呼びかけ、広範なサイバーリスク管理を実施することが期待されています。
このガイドラインのポイントは、金融機関が取り組むべきサイバーセキュリティ対策の基本原則を示しています。具体的には、以下の3つの重要な要素が挙げられます。
金融機関は、サイバー攻撃のリスクを正確に把握し、適切な管理体制を構築することが求められます。これには、定期的なリスク評価やシステムの脆弱性スキャンの実施が含まれ、潜在的なリスクを早期に発見し、対策を講じることが重要です。また、外部からの攻撃だけでなく、内部からの脅威にも対処する必要があります。従業員による不正アクセスやヒューマンエラーがセキュリティリスクとなることも多いため、適切な内部統制と監視体制の整備が不可欠です。
ガイドラインは、インシデントが発生した際の迅速かつ適切な対応を強調しています。サイバー攻撃の被害を最小限に抑えるためには、早期発見と速やかな対応が鍵となります。具体的には、インシデント対応チームの編成や対応手順の標準化が推奨されており、これにより、従業員が迷うことなく対応できる体制が整えられます。さらに、インシデント対応訓練やシミュレーションを定期的に実施することで、実際の緊急時に備えることが可能です。
金融機関は、取引先やサプライヤーなど、外部の関係者との連携にも注意を払う必要があります。サプライチェーン全体のセキュリティが確保されていなければ、外部からの攻撃経路となる可能性があります。ガイドラインでは、取引先との契約段階からセキュリティ要件を盛り込むことや、定期的なセキュリティ評価を実施することが推奨されています。特に、クラウドサービスの利用が進む中で、外部サービス提供者との適切なリスク管理が求められています。
ガイドラインは単に技術的な対策だけにとどまらず、金融機関の経営層がサイバーセキュリティ対策に積極的に関与することを強く推奨しています。経営層が主導することで、組織全体のセキュリティ意識が向上し、より効果的な対策が実施されることが期待されます。また、従業員教育の強化も重要な要素として挙げられており、全従業員が基本的なセキュリティ知識を持ち、リスクに対する意識を高めることが求められています。
少数・一人情シス(少人数または一人で情報システム管理を担う体制)は、中小企業でよく見られる現実です。リソースや人員が限られているため、日常のシステム運用と同時にサイバーセキュリティ対策を講じることは、非常に大きな課題となります。しかし、金融庁の「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(案)」には、少数・一人情シスにとっても有益な項目が含まれています。
インシデント対応の迅速化は、少数・一人情シスにとって非常に実践しやすく、かつ効果的なポイントです。ガイドラインで強調されている「インシデント対応の標準化」は、チームが小規模であっても大きな助けとなります。たとえば、標準化されたインシデント対応手順をあらかじめ定めておくことで、担当者が1人であっても、発生したインシデントに対して迅速かつ適切に対応することが可能になります。
具体的には、事前に「インシデント対応マニュアル」を作成し、発生する可能性の高いインシデントに対する具体的な手順をまとめることが推奨されます。このマニュアルには、対応すべき人員の連絡先、システムの復旧手順、外部パートナーへのエスカレーションルールなどが含まれます。これにより、突発的なインシデントが発生した際にも、迷うことなく迅速な対応が可能です。また、定期的なシミュレーションや訓練を行うことで、実際の対応スピードと精度をさらに高めることができます。特に、リソースが限られた少数・一人情シスでは、このような準備が非常に効果的です。
ガイドラインで強調されている従業員教育も、少数・一人情シスが取り組むべき重要なポイントです。全従業員がセキュリティ意識を高めることで、組織全体のリスクが大幅に軽減されます。少人数の情シスチームであれば、すべての従業員に対して個別に教育を行うことが難しいかもしれませんが、ガイドラインに基づいて効率的な教育プログラムを導入することで、組織全体のセキュリティレベルを向上させることが可能です。
例えば、オンラインのセキュリティ教育ツールや、定期的に行う短時間のセキュリティ研修を活用することで、従業員一人ひとりに必要な知識を短期間で提供することができます。さらに、フィッシングメールのシミュレーションやパスワード管理の徹底といった具体的な対策を織り交ぜることで、従業員が実践的なセキュリティ意識を持つようになります。このような教育プログラムは、一度実施すれば継続的に運用でき、少数・一人情シスの負担を軽減しながらも組織全体のセキュリティ対策が強化されます。
また、従業員教育の一環として、全従業員が簡単にアクセスできるセキュリティポリシーやガイドラインを文書化しておくことも有効です。これにより、従業員が疑問を感じたときや対策が必要なときに、迅速に正しい行動を取ることができるようになります。特に、少数・一人情シスが全従業員に個別対応するのが難しい状況でも、従業員が自主的に学び行動する環境を整えることが重要です。
金融庁の「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(案)」は、サイバーセキュリティ対策の基準を高めるための包括的な指針ですが、少数・一人情シスにとっては実行が難しい項目も含まれています。本セクションでは、現実的に少数・一人情シスにとって負担となり得るガイドラインの項目を取り上げ、代替策や現場に適応させるためのヒントを提案します。
ガイドラインでは、金融機関が取引先やサプライヤーなど、外部のパートナーを含めたサプライチェーン全体のセキュリティを確保することが求められています。これは非常に重要な項目であり、サプライチェーンを狙った攻撃が増加する中で、取引先のセキュリティリスクを管理することは不可欠です。しかし、少数・一人情シスにとって、これを実行するのは容易ではありません。
たとえば、中小企業では、複数の外部業者やサプライヤーを一括して管理し、それぞれのセキュリティ対策を確認・評価するためのリソースが不足しています。特に、小規模なチームでは、日常業務に加えてサプライチェーン全体の管理を行うのは現実的に困難です。このような場合、すべての取引先を厳密に管理するのではなく、リスクの高いパートナーに絞り、優先的にセキュリティ評価を実施することが現実的なアプローチとなるでしょう。
また、信頼性の高いベンダーを選定することで、セキュリティリスクを軽減することが可能です。少数・一人情シスでは、セキュリティ基準をクリアしている業者と優先的に契約を結び、外部委託先のセキュリティを確保することが効果的です。さらに、取引先に対して定期的なセキュリティチェックリストを送付し、簡易的にセキュリティ状況を確認することで、管理の負担を軽減しながらも一定の安全性を確保することができます。
ガイドラインでは、経営層がサイバーセキュリティ対策に積極的に関与することが推奨されています。これは、組織全体でサイバーセキュリティを推進するためには非常に重要な要素ですが、少数・一人情シスの現場では、この点が課題となることが多いです。経営層がITやセキュリティに対して深い知識を持っていない場合や、業務の多忙さからセキュリティ対策に十分な時間を割けない場合があります。
このような状況では、経営層とのコミュニケーション方法を工夫する必要があります。たとえば、経営層に対して難解な技術的用語を使わずに、ビジネスの観点からサイバーセキュリティの重要性を伝えることが効果的です。サイバー攻撃がもたらすビジネスへのリスクや、インシデント発生時のコストを具体的に示すことで、経営層にセキュリティ対策の必要性を理解してもらいやすくなります。
また、経営層がセキュリティ対策に関与するのが難しい場合、少数・一人情シスが経営層の代理として、セキュリティの意思決定を迅速に行えるように権限を委譲してもらうことも一つの解決策です。これにより、セキュリティに関する緊急の意思決定を迅速に行える体制が整い、現場での対応がスムーズに進むようになります。
このように、ガイドラインで示された「サプライチェーンの安全確保」や「経営層の関与」といった項目は、少数・一人情シスにとって実行が難しい部分もありますが、工夫次第で現場に適応させることが可能です。ガイドラインを盲目的に追うのではなく、自社の実情に合わせて柔軟に取り入れることで、現実的かつ効果的なサイバーセキュリティ対策を講じることができます。
著者:犬を飼っているゴリラ
大手IT企業に入社し、フロントエンド、PFシステムの開発に従事。その後、IaaSサービスなどの各種サービス事業開発に携わったのち、大手HR・販促事業会社に転職した。2018年にMBAを取得し、現在も国内大手メーカーの新規事業企画、プロダクトオーナーなどを担っている。
(TEXT:犬を飼っているゴリラ、編集:藤冨)
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