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(現地参加チケットは完売。会場は人の流れが途切れず、熱気に包まれていた)
筆者が会場に到着したのは、当日14時を過ぎたころ。会場に足を踏み入れた瞬間、まず感じたのは全体に広がる人の熱量でした。スタッフの方によると、今年は昨年以上に盛況で、現地参加チケットは2日前に完売したとのこと。その言葉どおり、会場には途切れない人の流れがあり、全体に活気が満ちていました。イベントの雰囲気は公式のオープニングムービーを見ると伝わりやすいと思います。
会場内にはセーフィー株式会社のライブモニタも設置されており、各トラックやサブイベントルームの様子をリアルタイムで確認できるようになっていました。

(会場の様子を映すライブモニタ)
まず立ち寄ったのはスポンサーブースエリア。軽食の用意があり、お菓子やコーヒー、さらにはパンの提供まであったとのこと。長時間のイベントでも無理なく過ごせる環境づくりの配慮が垣間見えます。
BTCON、準備中なう#btconjp pic.twitter.com/qtxnYyqPhC
— Daichi Fujii (@daichi_fj) November 15, 2025
交流企画としては「情シスビンゴチャレンジ」も実施され、名刺交換だけに頼らない新しいコミュニケーションが生まれていました。条件に合う参加者を探すゲーム形式により、気軽に会話が始まることで、会場全体に横のつながりが生まれていました。

(「情シスビンゴチャレンジ」と「スポンサースタンプラリー」の台紙)
さらに、会場を歩きやすくする仕組みとしてスタンプラリーの用意も。スポンサーブースを巡ってスタンプを集めることで、ノベルティがもらえる仕掛けです。話しかけるのが苦手な方でも、スタンプを理由に立ち寄りやすく、担当者との会話が自然に始めやすい仕組みが作られていました。

(ノベルティ交換コーナー。スタッフの方によれば早々に在庫がなくなったノベルティもあったとのことで、参加者の熱量の高さも伺えました)
BTCONJP 2025では、参加者の学びと交流を後押しするために、会場全体にさまざまなサブコンテンツが用意されていました。
会場のサブイベントスペースでは、株式会社ラック提供の情報リテラシーゲーム「リテらっこ」と、HENNGE株式会社提供の「情シスすごろく2」が実施されていました。

(トラブル事例を題材に、楽しく学べる「リテらっこ」のカード)
筆者はリテらっこを体験しましたが、トラブル事例への対処を手持ちのカードを使ってどう動くか考えるカードゲームで、情報セキュリティをゲーム形式で追体験できる内容でした。初対面の参加者同士でも自然と会話が生まれ、肩の力を抜いて学べる一方、リアリティもしっかり盛り込まれており、楽しさと学びを両立していました。
スポンサーブースに設けられていたのは、経験豊富な現役情シスに悩みを相談できる「情シスカフェ&お悩み相談」です。

(手書きのボードが目を引く「情シスカフェ&お悩み相談」コーナー)
筆者が立ち寄った際には、常に誰かが席に座っており、相談者と担当者が真剣に話し込む姿が印象的でした。中には、画用紙いっぱいに課題を書き出して相談している参加者もおり、現場の悩みを共有し解決策を探せる場として大いに機能していたように感じます。
サブコンテンツとして最後に触れておきたいのが、会場内に設けられた託児スペースです。
託児スペースの取り組みは今年初めてとのこと。「ベビーシッターTOKYO」のスタッフが常駐し、子ども連れでも安心してイベントに集中できる環境が整えられていました。誰もが参加しやすいカンファレンスを本気で目指す運営陣の姿勢が表れていると感じました。

(メインセッションのタイムテーブル表)
メインセッションでは、各領域のスペシャリストがそれぞれの立場から情シスについて語りました。セッション後には「Ask The Speaker」として登壇者に直接質問できるじっくり話せる場が用意されており、登壇内容の理解を深められる仕組みになっている点が印象的でした。
本記事では、3つのキーセッションを取り上げて紹介します。

「BTCONJP」公式HPより画像引用
トップバッターは、IPA 産業サイバーセキュリティセンターの登 大遊 氏。日本が抱えるIT人材不足とリテラシー不足を取り上げ、その打開策が語られました。
登氏は、IT人材を3つに分類。
(a)デジタル基盤製品・サービス(デジタル基盤人材)
(b)デジタル応用汎用製品・サービス(デジタル応用人材)
(c)デジタル活用支援サービス(デジタル活用支援人材)
日本は(c)が多く、(c)の人材をいかに(a)(b)の人材に転換できるかが重要であると指摘します。
鍵となるのは、各組織に「キャンパス内ガレージ」を作ること。自分たちで試作・検証できる場を作ることが(a)(b)の人材の育成につながり、日本のデジタル国富収益力を生む土台になると指摘しました。登氏が筑波大学で開発した「SoftEther VPN」や「VPN Gate」はまさに好例で、年間数百億円相当の社会的便益(ASV)を生み出しています。
登氏のセッションは、「IT人材が日本の将来を作る力を持っている」ことを再認識させてくれる内容でもあったと感じました。

「BTCONJP」公式HPより画像引用
次に、船舶エンジン製造業を展開する株式会社マキタの高山 百合子 氏のセッションを紹介します。
トークテーマは、取引先や委託先を含めたサプライチェーン全体のセキュリティ対策をどう底上げするかについて。高山氏は、調達部門からの協力も得ながら、取引先16社を実際に訪問。アンケートだけで判断せず、現場に足を運び、紙の量や配線、机周りの機器など「実際の環境」を確認しながら改善提案をする、という地道な取り組みを続けてきたといいます。
結果、訪問先の半数以上の企業がセキュリティ改善や強化に向けて動き出し、取引先との信頼関係も以前より深まったとのことでした。
高山氏が強調していたのは、「情シスは事業部門と一緒に現場を見に行こう」というメッセージ。そして「特効薬や万能薬はない」というリアルな意見も。情シスがサプライチェーンセキュリティに取り組む上でのヒントが詰まったセッションでした。

「BTCONJP」公式HPより画像引用
最後に登壇したのは、コカ・コーラ社のテクノロジー&ストラテジックパートナーシップ部門にてシニアマネージャーを務めるBenny Lee 氏。
単なる飲料メーカーではなく「体験を作る会社」として、140年変わらない中身そのままに、AIによって「体験」を更新し続けている点が印象的でした。AIと共同開発した限定フレーバー「Y3000」、コーラの「シュワッ」「プシュッ」などの音を楽器にした「Coke SoundZ」、コカ・コーラのサンタと会話しながら専用のスノードームを作成する「Create Real Magicシリーズ」など、AIを使って未来的な体験を生み出した事例が紹介されました。
後半は、200以上の国でブランドを崩さずに展開するためのローカライゼーションの話題へ。AIが誤解しないためのブランドガイドラインを体系化し、ラベルや広告を自動生成しても世界中で色・ロゴ・配置がぶれない仕組みを構築しました。
印象的だったのは、AI導入を「コスト削減」と捉えず、ビジネスが前進しより良い仕事を生み出すための道だと示していたこと。AIをデザイナーの代わりに置き換えているわけではなく、むしろこれまで以上にデザイナーが主導権を握っていることも強調していました。
会場では、ノベルティバッグやパンフレットを手にした参加者が行き交いました。

(ノベルティのクオリティの高さからも、運営陣の熱量が伝わってきたように感じました)
さらに、Xでもトレンド入りするほどの盛り上がりを見せていました。
Xのおすすめに載りました!!#BTCONJP pic.twitter.com/aJGEFinWrm
— 岡村 慎太郎(おかしん) (@okash1n) November 15, 2025
イベント終盤には懇親会も開催され、会場では多くの参加者が経験や悩みを共有しながら交流を深めたようです。
そして、最後に。会場を歩きながら強く感じたのは、BTCONJPを支えているスタッフの方々の凄さです。スポンサーの調整や会場の手配、飲食やノベルティの準備など、裏側を想像すると、どれだけの準備が積み重なっているのかが伝わります。
特に今年は来場者数も増え、スタッフの方も「昨年以上の盛況です」と話していました。現地にいた多くの参加者が、「この規模をコミュニティの力で実現しているのか……」と驚いたのではないでしょうか。情シスコミュニティの熱量をそのまま形にしたようなイベントであり、こうした場づくりこそが、BTCONJPの魅力なのだとあらためて実感しました。

(参加者が自由に書き込めるクリエイティブボード。イベント序盤に撮影したもの)
来年はどんな取り組みが生まれるのか、今から楽しみです。
(取材・TEXT:七瀬ユウ)
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