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メールの誤送信の経験者は約50%。なくならない課題とアプローチの手段とは?–情シスの「目」ニュース

月曜日の朝にお送りする「情シス『目』ニュース」では、日々発信されるさまざまなトピックスを情シス・エンジニアの方々向けに「再解釈」した情報を掲載中。AI、働き方、経済など幅広いニュースをピックアップし、業務に役立つほか、つい同僚に話したくなる面白い話題まで身近で自分事化しやすくお届けします。

 

ビジネスコミュニケーションに欠かせないツールのメール。その便利さの一方で、「誤送信」という思わぬミスがつきものです。デジタルアーツの調査によると、社会人の約50%がメールの誤送信の経験をしたことがあると回答しています。つまり、2人に1人がなんらかの形で誤送信ミスを経験しているのです。

 

誤送信には、システムの不具合によるものとヒューマンエラーによるものがあります。システムの不具合であれば技術的な対策が可能ですが、「送信ボタンを押した後の後悔」は技術だけでは完全に防ぎきれません。

 

本記事では、メール誤送信の課題と、それに対する有効な対策について考えていきます。誤送信リスクを最小限に抑え、万が一の際の影響を軽減していくための解決策を一緒に探っていきましょう。

 

■情シスの「目」ニュース「キャッチアップポイント」

①社会人の約50%がメール誤送信の経験がある
②メール誤送信の原因はヒューマンエラーが多く、仕組みで発生を予防することが可能
③メール送信後の最初の10分が、誤送信を未然に防ぐ重要な時間

         

メール誤送信の実態と発生原因

メールの誤送信は、企業の情報管理において深刻なリスクをもたらす課題のひとつです。どのような誤送信がどの程度発生しているのか、調査結果を見てみましょう。

メール誤送信の内容

調査によると、最も多い誤送信の内容は「宛先の間違い」で、誤送信を経験した人の約65%がこのミスをしたことがあると答えています。次いで「添付ファイルの付け忘れ」や「本文の誤字脱字」などが続きます。

主な誤送信の内容(全体/管理者/従業員)

• 宛先を間違える…64.65%(管理者61.5%、従業員67.8%)
• 添付ファイルを忘れる…51.15%(管理者47.7%、従業員54.6%)
• メール本文の誤字脱字…43%(管理者41.5%、従業員44.5%)
• 添付ファイルを間違える…32.85%(管理者36.2%、従業員29.5%)
• 本文が作成途中のまま送ってしまう…27.35%(管理者29.2%、従業員25.5%)
• Bcc指定をToやCc指定としてしまう…17.7%(管理者21.5%、従業員13.9%)
• 意図しない内容を送信してしまった…11.25%(管理者13.1%、従業員9.4%)

メール誤送信が起きる主な原因

メールの送信ミスが発生する主な原因は、システムによるものとヒューマンエラーの2つに分類されます。

システムが原因となる場合

オートコンプリート機能による誤入力
自動補完機能によって、意図しない宛先が登録されてしまうことがあるため注意が必要です。

便利な機能が誤送信を引き起こす
「Enterキーで即送信」などの機能が原因で、作成途中のメールを誤って送信してしまうことが考えられます。

メールサービスの不具合
システム側のトラブルで、メールが送信されなかったり、遅延したりすることがあります。

ヒューマンエラーが原因となる場合

類似したメールアドレスや連絡先の選択ミス
メールアドレスの打ち間違えや、似た名前の連絡先を誤って選んでしまうことがあります。

時間的なプレッシャーによる確認不足
急いで対応しなければならない状況では、確認が不十分になりがちです。

使いやすいインターフェースが逆効果になることも
メールシステムは誰でも簡単に使えるように工夫されています。その結果流れ作業になり、確認が不十分なまま送信ボタンを押してしまうことが少なくありません。

マルチタスクによる注意力の低下
複数の業務を同時に進めると、集中力が分散し、メールの誤りを見落としやすくなります。

メール誤送信が引き起こす影響

誤送信の多くは、ちょっとした不注意や確認不足によるものですが、単なるミスでは済まされない重大な影響をもたらすことがあります。

情報セキュリティへの影響

最も深刻なのは、個人情報や機密情報の漏洩です。誤送信によって情報が外部に流出した場合、法的責任や罰則が発生する可能性があります。特に個人情報保護法や業界のガイドラインに違反するケースでは、企業にとって大きなリスクとなります。

企業イメージの損失

取引先や顧客への誤送信は、企業の信頼に大きな影響を与えます。
特に個人情報を扱う業種では、高度な情報管理が求められます。誤送信による情報漏洩が発生した際の企業への影響は計り知れません。

業務効率の低下

ひとたび誤送信が発生すると、内容によっては膨大な時間と労力を費やすことになります。誤送信先への連絡、関係各所への連絡、再発防止策の検討など、多くのリソースが必要になるでしょう。

精神的ストレスの増大

「つい、うっかり」で起きてしまう誤送信。防げるミスだったからこそ、誤ったメールを送信した本人にとっては非常に大きなストレスとなります。ミスを気にして委縮してしまうこともあり、業務パフォーマンスの低下につながりかねません。

効果的な誤送信防止策

調査によると誤送信をしたことに「送信ボタンを押した直後」から「10分以内」の間に、半数以上の人が気付いており、誤送信の原因は多くが確認不足、誤操作によるヒューマンエラーです。このことからメールの誤送信を防ぐためには「システム的な対策」と「運用・教育面での対策」の2つの方法が有効であることが分かります。

システム的な対策

送信遅延機能の導入
送信後、一定の時間が経過してからメールを送信実行する機能を活用することで、半数以上の誤送信が防止できると考えられます。

添付ファイル確認システム
本文中に「添付」というワードが入っているのに、添付ファイルが付いていないとアラートを表示します。AIに監視させて、機密情報を含む可能性があるファイルを警告するシステムもあります。

送信前ポップアップ確認
送信ボタンを押すとメールの内容を表示し、送信の最終確認をする仕組みです。添付ファイルの付け忘れや、誤字など送信直後に気が付く「うっかりミス」を防止できます。

添付ファイルを分離して送信する
送信したいファイルをメールに直接添付しないで、クラウドストレージにアップしリンクをメールに添付する方法です。添付ファイル付きのメールを送ると自動分離して、ダウンロードリンクを送信するシステムもあります。

運用・教育面での対策

研修やケーススタディの実施
実際の誤送信事例をもとに、注意ポイントや対策を学ぶ機会を設け「誤送信をしない・未然に防ぐ」文化を醸成します。誤送信による情報漏洩のニュースを共有しても良いでしょう。

運用の見直し
メールマガジンなど多数に向けてBccで発信するメールは、必ず上長による確認を経てから送信する、チェックリストを使い送信前チェックを行うなど、運用のルールを見直しましょう。運用者に過剰な負担がかからないようにすることも重要です。

誤送信防止には「システム」と「人」が重要

メールの誤送信は、どの企業にとっても避けられない問題ですが、適切な対策を講じることで大幅にリスクを軽減できます。「システム」と「運用・教育」の両面から効果的なアプローチを検討して、組織全体で誤送信防止に取り組んでいきましょう。

著者:おちあいなおこ
製造・卸・物流を扱う企業で情報システム部に所属。現場とともに走る情シスを目指し、日々現場に足を運び情報収集にいそしむ。基幹システム、Webアプリケーションの選定・導入・運用経験多数。もっと多くの企業の業務を改善したいという想いから独立。バックオフィスの伴走型支援を中心に、Webライターとしても活動中。

(TEXT:おちあいなおこ、編集:藤冨啓之)

 

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