はじめに、企業における社内コミュニケーションの現状として、ProFuture株式会社の調査レポートを参考に解説します。
企業の人事責任者・担当者235名を対象に行った同調査によると、大企業(従業員1,001名以上)の76%、中堅企業(301~1,000名)の89%、中小企業(300名以下)の71%が社内コミュニケーションに課題を感じていることが分かりました。
※ProFuture株式会社の調査レポートより引用
社内コミュニケーションにおける課題の内訳に関しては、特に「部門間」でのコミュニケーションが大きな課題となっています。
※ProFuture株式会社の調査レポートより引用
企業規模が大きくなるにつれて、社内の部門は経営企画や商品企画・開発、営業、マーケティング、設計・製造、人事、総務、経理・財務、法務、情報システムなど多岐にわたります。
部門数や拠点数の多い大企業・中堅企業では、部門間のコミュニケーションがなかなかスムーズに進まない課題を持っているのが現状です。情シス部門においても、社内の営業部門やマーケティング部門、経理・財務部門などとのコミュニケーションに課題を感じている方も多いのではないでしょうか。
情シス部門が抱える社内コミュニケーションの課題にはさまざまなものがありますが、主な課題としては以下のようなものが挙げられます。
現場の業務部門と情シス部門の従業員では、ITに対する理解度に差があることが一般的です。例えば、業務部門から「もっとシステムを使いやすくして欲しい」など曖昧な表現で依頼される場合もあり、意図を正しく把握するのに時間がかかることも多いでしょう。
社内システムの仕組みなどを説明しても「難しい」と敬遠されがちで、社内のシステム開発プロジェクトを推進する際なども業務部門との意思疎通がうまくいかず要件定義漏れなどのリスクが伴います。
他部門が社内システムに関わる変更や改善を計画していても、情シス部門にはギリギリで情報が共有されるケースも少なくありません。「もうベンダーと契約したのでこれで対応して欲しい」と後から言われ、システム設計や情報セキュリティなどの面で問題が発覚するケースもあります。
その結果、情シス部門側で火消し的な対応を強いられる構図もめずらしくありません。
ITに苦手意識のある従業員も多く、「情シス部門に頼めばなんとかしてくれる」という空気が社内に根強くある企業も見受けられます。そのため工数や技術的課題を無視した依頼などが情シス部門に多く寄せられ、情シス現場が疲弊してしまったという経験もあるのではないでしょうか。
依頼のたびに実現可能性の検討や調整に時間を取られ、本来注力すべき戦略的なIT施策が後回しになることも多いのが実情です。
前述のような情シス部門と他部門間の社内コミュニケーション課題を解決するためには、以下に挙げるような対策を行うことがポイントです。
部門間のコミュニケーション課題を解決するためには、相互理解の場づくりが不可欠です。情シス部門主導で業務部門向けのIT勉強会や相談会を定期的に開催し、専門用語をかみ砕いて説明する機会を設けるとよいでしょう。
それと同時に業務現場の課題や内情を情シス部門側が知る機会も設けることで、双方向の理解を促進し、社内コミュニケーションの活性化が期待できます。
社内システムの変更時は、必ず事前に情シス部門と協議する社内ルールを明文化し、役員や部門長レベルにまで浸透させることが重要です。シャドーITによる情報漏えいリスクや企業の信用失墜リスクなどを説明することで、理解を得やすくなるでしょう。
プロジェクト立ち上げ段階から情シス部門も入ることで、技術的・セキュリティ的な観点などからの早期フィードバックが可能となり、トラブルを未然に防げます。
情シス部門への過度な期待や依存を防止するためには、業務依頼内容を見える化し、対応工数や優先順位を関係者間で共有する仕組みが必要です。チケット管理ツールや依頼ポータルを導入し、「誰が・何を・いつまでに」求めているのかを明確化しましょう。
部門間で情報共有・合意形成しながらタスクを進める体制を整えることで、健全な関係構築や社内コミュニケーションの円滑化につながります。
約8割の大企業が部門間をはじめとする社内コミュニケーションに課題を抱えています。情シス部門にとっても例外ではなく、業務部門など他部門との意思疎通の難しさを感じている方も少なくないでしょう。
社内コミュニケーションの壁は、一朝一夕では解決しにくい課題です。定期的な社内勉強会・相談会の開催や社内ルールの明文化、業務対応の工数・優先度の可視化といった地道な活動を継続し、社内の方向性を合わせていきましょう。
著者:まにほ
大手SIerおよび大手メーカーの情報システム部門で実務経験を積み、現在はITライターとして独立。DX・IT・Webマーケティング分野を中心に多数の記事やコラムを執筆。ITストラテジスト、プロジェクトマネージャー、応用情報技術者などを保有。
(TEXT:まにほ、編集:藤冨啓之)
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