労働力人口の減少による人手不足や、AIなどの技術革新による業務の高速化などで、働く人々の心の負担は年々大きくなっています。
厚生労働省の調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した、または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%にのぼります。
その中でも、情シス部門と共通点が多い情報通信業では、実に32.4%もの労働者がメンタル不調を訴えている状態です。
この割合は全産業の中でもっとも高く、IT従事者のメンタルヘルス対策は急務の課題と言えるでしょう。
社会問題にもなっている働く人のメンタルヘルス不調ですが、企業の対策はどうなっているでしょうか。厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.8%となっています。
内訳を見てみましょう。
・ ストレスチェックの実施:65.0%
・ 職場復帰における支援(職場復帰支援プログラムの策定を含む):25.1%
・ メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備:45.0%
・ 医療機関を活用したメンタルヘルス対策の実施:10.0%
2015年12月より、労働者50人以上の事業場では「ストレスチェック」が義務付けられています。2025年5月の法改正により、公布から3年以内(2028年5月まで)に50人未満の事業場でも義務化されることが決まっています。
こうした取り組みが進んでいる一方で、メンタル不調による休職や退職は減る気配がありません。
なぜ情シスをはじめ、IT従事者のメンタル不調が多いのでしょうか。
それは、業務上の特色に要因がありそうです。
・ 経営層、他部署のITリテラシー不足「こんなこともできないの」「なんでできないの」という質問にモヤモヤ。
・ 板挟みになる立場での疲弊。要望(現場)と予算(経営)、部門間の要望のズレ、境界業務の押し付け合いの調整にぐったり。
・ システムは動いて「当たり前」。止めることは許されません。
・ 緊急対応、24時間休日関係なく呼び出されることも。
・ 巧妙化するサイバー攻撃への対応とセキュリティリスクとの闘い。
・ 異常な速さの技術革新、常に新しい知識やスキルを習得し続けなければなりません。
・ ひとり情シス・人手不足による業務負担の増大。
・ レガシーシステムによる非効率な運用。
強いストレスに断続的にさらされている情シス部門のみなさんは、より丁寧にメンタルケアをする必要があるでしょう。
このような情シス特有の課題に対して、専門的なサポートサービスも登場しています。
例えば、ひとり情シス協会では「ASAP」というメンタルヘルスサポートプログラムを提供しています。
このプログラムは、ひとり情シスや少人数体制で働く情シス担当者に特化していて、3種類の心理検査と、臨床心理士・公認心理士によるカウンセリングを実施、その結果をアセスメント報告書として提供しています。
カウンセリングや心理検査はリモート(Zoom)での対応が可能です。
同協会では、メンタルケア以外にも情シス担当者向けの基礎知識セミナーなど、情報システムの課題解決に役立つ情報を幅広く提供しています。
こうした専門的なサポートも、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
「ストレスチェック」は、紙やExcelによるチェックシートのほかに、厚生労働省より「ストレスチェック実施プログラム」が提供されています。
このプログラムはパソコンにインストールする必要があります。
自社で導入する場合は、情シスのサポートが必要です。
昨今の技術の進化により、AIを使ったストレスチェックサービスも増えています。
AIによるメンタルチェックには多くのメリットがあります。
・ 24時間いつでも受けられる
・ プライバシーへの配慮
・ 音声・表情解析により誤魔化せない診断が可能
・ 診断待ちがないから早期発見、早期ケアが実現
・ 必要に応じて、専門家に繋がることもできる
自社への導入だけでなく、ご自身の健康のためにも、個人でAIメンタルチェックを試すのも良いかもしれません。
企業にとって、情シスは重要な業務を担う、かけがえのない存在です。
そして、情シスのみなさんにとっても、会社は簡単に辞めることができない大切な場所でしょう。
お互いにとって重要で大切な存在である双方を守るためにも、メンタルヘルスを健やかに保つことは、何よりも重要な仕事の一つです。
システムのエラーが小さいうちに解消すべきであるように、メンタル不調も放置すれば大きな問題に発展しかねません。
そうなる前に、早め早めの対処を心がけましょう。
著者:おちあいなおこ
製造・卸・物流を扱う企業で情報システム部に所属。現場とともに走る情シスを目指し、日々現場に足を運び情報収集にいそしむ。基幹システム、Webアプリケーションの選定・導入・運用経験多数。もっと多くの企業の業務を改善したいという想いから独立。バックオフィスの伴走型支援を中心に、Webライターとしても活動中。
(TEXT:おちあいなおこ、編集:藤冨啓之)
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