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SaaS利用数は2年で95%増。情シスの業務時間の約20%を占める関連業務の「主要化」が進む-情シスの「目」ニュース

情シス担当者の皆さん、自社で使うクラウドサービス(SaaS)の数が増え続けて困っていませんか?実は、freee社の最新調査レポートによれば、ここ2年で企業のSaaS利用数は約95%も増加し、今やSaaSは企業活動に欠かせない「当たり前」の存在となりました。さらにSaaS導入が進んだとき情シスはどのように対処していくべきでしょうか?本記事で詳しく解説します。

情シス部門がSaaS管理を一元している企業はわずか22%。課題と分散管理状態のリスクとは-情シスの「目」ニュース

情シス部門がSaaS管理を一元している企業はわずか22%。課題と分散管理状態のリスクとは-情シスの「目」ニュース

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■情シスの「目」ニュース「キャッチアップポイント」

①SaaS利用は過去2年で約95%増加。中小企業にも広がり、主要業務の「当たり前」に。
②情シス工数の約2割がSaaS管理に集中。アカウント権限、監査、コスト最適化が課題。
③管理ツール導入で自動化・可視化が進展。より戦略的な仕事に集中しよう。

■情シスの「目」ニュースとは?

月曜日の朝にお送りする「情シス『目』ニュース」では、日々発信されるさまざまなトピックスを情シス・エンジニアの方々向けに「再解釈」した情報を掲載中。AI、働き方、経済など幅広いニュースをピックアップし、業務に役立つほか、つい同僚に話したくなる面白い話題まで身近で自分事化しやすくお届けします。

         

SaaS利用は2年で倍増、企業ITの「当たり前」に定着

新型コロナ以降のDX推進や働き方の変化を追い風に、企業でのSaaS利用は爆発的に拡大しました。大企業だけでなく中小企業にもクラウドサービスが浸透し、業務のデジタル化を下支えしています。

2年前よりSaaS利用が増加した企業が95%に

freee社が2025年に実施した調査では、「自社のSaaS利用数が2年前と比べ増えた」と回答した企業が約95%にも上りました。前年調査(2024年)の80%という値を大きく上回る結果で、SaaSの利用拡大が一層加速したことがうかがえます。この調査には従業員数100名未満から1000名超まで幅広い企業が参加しており、SaaSの普及は大企業だけでなく中小企業にも広がっているのが特徴です。

実際、コラボレーション系(例:チャットやオンライン会議)や会計ソフトなど、さまざまなSaaSが企業規模を問わず一気に浸透しています。SaaSに対する投資も一般化しており、有償のSaaSを利用している企業は全体の61%に達しました。有償SaaSを6つ以上利用している企業も前年から軒並み増加しており、どの企業も必要な業務領域には積極的にSaaSを導入している状況です。

DX再加速とハイブリッドワークが普及を後押し

なぜここまでSaaS利用が増えたのでしょうか。その背景にはDX(デジタルトランスフォーメーション)の再加速とハイブリッドワークの定着という二つの潮流があります。コロナ禍で急拡大したリモートワーク文化は、アフターコロナにおいてもオフィス勤務と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークとして定着しました。場所を問わず使えるクラウドサービスはこの流れに乗って採用が進み、各現場の判断で業務に合ったSaaSを「とりあえず導入」するケースも増えています。

以前なら新しいソフト導入には情シスのお墨付きが必要でしたが、今では各部門が手軽にSaaSを試せる時代です。その結果、社内で使われるSaaSの種類・数は雪だるま式に増加し、企業全体のSaaS利用数が急激に膨らみました。ビジネスアプリのクラウド化が進み、「オンプレ前提」だった業務も次々とSaaSに置き換わっています。SaaSがこれほど当たり前になると、「どのサービスを使うか」よりも「どう使いこなすか、どう管理するか」が企業ITの新たなテーマになりつつあります。

2. SaaS管理が情シス主要業務に?増え続ける負担とその対策

SaaSの導入拡大は業務効率化など多くのメリットをもたらしましたが、その裏で情シスの負担も増大しています。利用サービスが増えるほど、管理すべきアカウントやセキュリティ対策も増え、今や「SaaS管理」自体が情シスの主要業務となりつつあります。

情シス工数の約20%がSaaS管理業務に

調査によると、情報システム部門(情シス)が費やす時間の約2割(19%)がSaaS関連の業務で占められていました。他の主要業務と比較しても無視できない割合で、SaaS管理はヘルプデスク対応やPCキッティング(初期設定)と並ぶ「大仕事」になっているのです。実際のSaaS管理業務にはどんなものがあるでしょうか。例えば、新規ツール導入時のアカウント発行やアクセス権限の付与、従業員の異動・退職時のID削除、利用状況のモニタリング、料金プランや契約更新の管理…挙げればキリがありません。

筆者自身、システムを開発導入する中で「毎日のようにどこかの部署のSaaSアカウント追加・削除作業をしている」という声をよく耳にします。SaaSが増えるほど細かな管理タスクが積み上がり、情シスのスケジュールは連日「細切れ作業」の連続になりがちです。さらにセキュリティ上の不安から利用申請フローを厳格化すると、今度は「申請が面倒だ」と利用部門から反発を招き、時に情シスに黙って勝手にSaaSを使われてしまう(シャドーIT化)という負のスパイラルに陥ることも…。こうした状況に心当たりのある読者も多いのではないでしょうか?

また、SaaS管理にはコスト最適化の課題も潜んでいます。部門ごとにバラバラに契約をしていると、類似サービスを重複契約していたり、使われていない幽霊アカウントにライセンス料金を払い続けていたりと、知らないうちに無駄なコストが膨らむケースが少なくありません。さらに情報セキュリティ監査への対応や、利用状況のログ管理など、コンプライアンス面でも年々要求が高度化しています。SaaSが増えれば増えるほど、「便利さ」と引き換えに管理の悩みも増えていく。これが情シス最前線の現実と言えるでしょう。

SaaS管理ツールの導入が進み、9割が効果を実感

増大するSaaS管理業務に対処するため、専用のSaaS管理ツールを導入する企業も増えてきました。調査によれば、SaaSを利用している企業のうち57%が既にSaaS管理システムを導入済みで、特に社内で20種類以上のSaaSを使っているような企業では7割超がツールを活用しています。もはや「SaaSが多ければ管理ツールを使うのが当たり前」の時代と言えるでしょう。さらに導入企業の91%が「効果があった」と回答しており、多くの情シス担当者がそのメリットを実感しています。月額費用がかかるツールであっても、「半年以内に投資回収できた」という企業が多く、コストパフォーマンスも上々のようです。

もともとSaaS管理ツールは外部から一元的に各サービスのユーザーアカウントや利用状況を管理できるのが強みですが、導入が進むにつれ「使わないSaaSにお金を払い続ける」「退職者のアカウント消し忘れで情報漏えいリスク」といった「あるある」の課題解決に一役買っていることがデータでも示されています。おそらく情シス担当者にとっては「ようやく来たか!」という心強いトレンドではないでしょうか。

3. まとめ:SaaS主要業務化の時代に備えて

SaaSがビジネスの基盤となった今、情シス部門には従来以上に多面的な役割が求められています。攻め(DX推進)と守り(セキュリティ対策)の両面で活躍しつつ、限られたリソースで増え続けるSaaSをどう効率的に管理するか、、その戦略が各企業のデジタル競争力を左右すると言っても過言ではありません。

攻めと守り、広がる情シスの役割

今回の調査結果から浮かび上がったのは、情シス部門の役割がこれまでになく拡大している現実です。SaaSの爆発的普及により、情シスは社内のDXをリードする「攻め」の役割が期待される一方で、増え続けるクラウドサービスを統制しリスクを管理する「守り」の責任も重くなっています。実際、前述の通り経営層の61%が情報セキュリティを重要課題に挙げており、セキュリティ面での情シスへの期待とプレッシャーは高まるばかりです。「便利さ」と「統制(ガバナンス)」のバランスをどう取るかは、まさに現在進行形で各社の情シスが格闘しているテーマだと感じます。

SaaS時代を賢く乗り切るには

では、このSaaS主要業務化の時代を情シスはどう乗り切っていけば良いのでしょうか。鍵となるのはやはり効率化と可視化です。まず、増え続けるSaaSを人力で個別対応するには限界があります。専門ツールの活用も含め、自動化できるところは自動化し、重複や無駄を見える化してスリムにしていく取り組みが不可欠です。その上で浮いた時間やリソースを、本来情シスが注力すべき戦略的な仕事に使いましょう。

幸い、SaaS管理に関する課題は徐々に認識が広がり、解決策も増えてきました。「自社のSaaS利用状況を改めて棚卸ししてみよう」「情シスの負担を軽減できる仕組みを検討しよう」と考える担当者の方もいるでしょう。SaaS全盛の時代を賢く乗り切るために、SaaSを味方につけ、情シスがさらに活躍できる未来を切り拓いていきましょう!

(TEXT:犬を飼ってるゴリラ、編集:藤冨)

 

特集|月曜日の朝にお送りする
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