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毎年、年末年始が明けて出社した朝に真っ先にサーバーの稼働状況を確認し、正常に稼働している事を確認できるとまずは一安心。次にPCを立ち上げて、最初に確認するのは未読メールの件数です。数日分の問い合わせ、障害報告、アカウント申請、ちょっとした相談など。そのすべてが「至急ではないが早めに対応してほしい」という温度感で積み上がっており、ひとり情シスの仕事を一気に圧迫するのです。
特に、私にとって2025年の年末はその画面を見るまでの時間が例年以上に長く感じられました。というのも、昨年の年末は急病で入院しており、事前準備をほとんどできないまま休暇に突入することになったからです。ひとり情シスとしては、本来あってはならない状況ですが、結果として大きなトラブルは発生せず、胸をなで下ろしたのが正直なところです。
本来であれば、長期休暇を迎える前に以下の作業を行っています。
・アカウント棚卸し
・バックアップ確認
・緊急連絡先の更新
・「休み明けは問い合わせが集中します」という社内アナウンス
しかし、今回は入院の関係上全て満足に準備できませんでした。前述のとおり、幸運な事に毎度の長期休暇ではトラブルなく終わっていますが、休みに関係なくいつ何が起きるかもしれないとヒヤヒヤしています。

※株式会社SmartHR「【年末年始のセキュリティ対策に関する調査】情シス担当者の6割以上が休暇中のセキュリティに「不安」、2社に1社が長期休暇中のセキュリティのヒヤリハットを経験」
そしてこのような問題は、情シスにおける共通言語ともいえる調査結果も明らかになっています。例えば、2025年12月24日に株式会社SmartHRが行った調査によると、企業の情報システム担当者の64.9%が、年末年始の長期休暇中のセキュリティ体制に不安を感じていることが明らかになっているのです。

具体的に年末年始明けの復帰後、各部署の方々に掛けられた声を紹介しましょう。
○○さんがいなかったので、PCの調子が悪いと言われても休み明けまで待ってくださいとしか言えなくて……。
VPNがつながらなくて焦りました。再起動したら直ったんですけど、こういうとき対応出来る人が他にいなくて……。
システムが誤作動を起こして大変でした。
そして各部署共通で言われた、ひとり情シスあるあるの一言。
「とりあえず触らないでおきました」
他部署から上記のような言葉を掛けられる度に、トラブルが起きなかったのではなく「触られなかったから表面化しなかった」だけかもしれない。そう考えると、背筋が少し冷えます。
このような背景から、長期休暇の最大のリスクはシステム障害ではなく「対応できる人がいない状態」そのものだと考えています。これは多くの調査でも指摘されている「担当者不在」と「属人化」の問題そのものですが、ひとり情シスにとっては構造的に避けにくい現実でもあります。
前述した調査で、非常に共感を覚える結果があったので紹介します。

※株式会社SmartHR「【年末年始のセキュリティ対策に関する調査】情シス担当者の6割以上が休暇中のセキュリティに「不安」、2社に1社が長期休暇中のセキュリティのヒヤリハットを経験」
注目したのは、第2位の「不審なメール(標的型攻撃メール等)の受信:47.1%」です。というのも、私が年末年始明けに復帰した際、以下のようなやり取りが現場で生じたからです。
「メールがめちゃくちゃ溜まってるんですけど、これ開いて大丈夫なやつですか?」
画面を見せてもらうと未読が100件以上。その中に、明らかに不自然な英語のメールが混ざっていました。
「添付はすぐ開かないでくださいね」
そう伝えると返ってきたのが、
「ですよね……でも早く処理しないと仕事にならなくて」
このやり取りに、休み明け特有のリスクが凝縮されています。社員は早く通常業務に戻りたい。情シスは安全を確認してほしい。どちらも正しいのに、時間だけが足りない。その結果、以下のような行動が生じてしまいます。
・差出人をよく見ない
・リンクをそのままクリック
・添付ファイルを開く
これは意識の問題ではなく、休み明けという状況が生み出す構造的なリスクだということを肝に銘じておかなければ、本質的な対策にはつながらないでしょう。
また、復帰初日の問い合わせは想像通り集中しました。その一例もいくつか挙げておきます。きっとひとり情シスにとってはよく尋ねられる内容だと思います。
・パスワード期限切れました
・PC起動しません
・プリントできないです
・このメールは本物ですか?
・アカウント申請していいですか?
これらすべてに「お忙しいところすみません」が付いています。ここで重要なのは「誰も悪くない」ということです。
ただ、同時多発的に来ると処理能力の限界に挑戦されている気分……。というよりも、現実的に処理能力の限界を超えて意識を失う寸前になります。
ひとり情シスにとって本当に負荷が高いのは、大規模障害ではなく、この細かい問い合わせの波ではないでしょうか。次に筆者なりの対応策について考えていきましょう。

今回の経験で最も必要だと感じたのは、社員が休み明けにどう動くかを事前に設計しておくことでした。
休暇前に一通のアナウンスを出すだけでも状況は変わります。
・休み明けは不審メールが増える可能性があります
・添付やリンクはすぐに開かず差出人を確認してください
・迷った場合はこのチャットに送ってください
以前、上記のアナウンスを実施したとき、実際に「このメール、怪しい気がするので確認お願いします」という相談が増えました。正直なところ、私の会社ではセキュリティ対策についてはベンダー任せな傾向が強いです。そんな中で、ひとり情シスが出来るアクションは周囲への周知と啓蒙になると考えています。少し仕事は増えますが、インシデントが起きるよりははるかに健全です。
入院を経験して痛感したのは、以下のような自分の頭の中にしかない情報の多さでした。
・ベンダーの連絡先
・保守契約の範囲
・管理者アカウントの保管場所
完璧なマニュアルは作れなくても、「ここを見れば何とかなる」という場所を作ることはできます。これは会社のためだけではなく、自分が安心して休むための準備でもあります。
筆者だけでなく、ひとり情シスは休んでいても会社のITのことを気にしている人がほとんどです
何か発生した際は、スマートフォンに通知が飛ぶようにしていますが、通知があると何かあったのではないかと反応してしまう。逆に通知が全くないとトラブルが発生しているのではないかと感じてしまう。
今回の入院で、気にしても対応できない状況をあらためて経験しました。だからこそ思います。長期休暇対策は、自分が安心して休むための仕組みでもあるのだと。そのためにはできる小さな取り組みを積み重ねることが大切ではないでしょうか。
直近の長期休暇のGWは、すぐにやってきます。大きな仕組みを作る必要はありません。
・休み明けの注意喚起を出す
・緊急連絡先を共有する
・問い合わせ窓口を一本化する
このどれか一つだけでも、確実に状況は変わります。今回の年末年始は「何も起きなかった」で終わりました。次は「何かあっても大丈夫」と言える状態で迎えたいと思います。
未読メールの件数を見ても、少し余裕を持って深呼吸できる。そんな休み明けを目指して。ひとり情シスの改善は、いつも小さな一歩から始まります。さて、さっそく今日から準備しなくちゃ!がんばろう!
(TEXT:ライター名、編集:藤冨)

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