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円安・物価高が情シスの運用コストに与える影響とは?現場・経営視点からの見解は?–情シスの「目」ニュース

月曜日の朝にお送りする「情シス『目』ニュース」では、日々発信されるさまざまなトピックスを情シス・エンジニアの方々向けに「再解釈」した情報を掲載中。AI、働き方、経済など幅広いニュースをピックアップし、業務に役立つほか、つい同僚に話したくなる面白い話題まで身近で自分事化しやすくお届けします。

円安と物価高が情シスの運用コストに与える影響について、多くの企業が頭を悩ませています。特に、グローバル市場での取引が活発化する中で、為替レートの変動や物価の上昇は無視できない要素となっています。円安が進行すると、海外からのIT機器やソフトウェアの調達コストが増加し、運用コストに直結します。

また、物価高により人件費や施設コストも上昇し、これらが総合的に情シスの運用に大きな影響を与えます。本記事では、現場と経営の両視点から、これらの課題にどう対処するかについて詳述します。

■情シスニュース「キャッチアップポイント」

①円安と物価高が情シス運用コストを増加させ、IT機器やIaaSの価格に影響を与える
②現場と経営視点からの対策が重要で、コスト最適化とリスク分散が鍵となる
③持続可能な運用体制を築くための長期的な戦略が必要

         

円安と物価高がITコストに与える影響

円安とは、日本円の価値が他の通貨に対して低下することを意味します。これは輸入品の価格上昇を引き起こし、特にIT機器やソフトウェアの調達コストに直結します。例えば、円が10%下落すると、同じ製品を購入するために10%多くの円が必要となります。

円安の影響は、IT機器やソフトウェアの価格だけにとどまりません。例えば、円安が進行すると、海外からのサポートやメンテナンス費用も増加します。これにより、情シスの運用コストがさらに押し上げられることになります。また、海外ベンダーとの取引が円安の影響を受けることで、契約条件の見直しや再交渉が必要となる場合もあります。

物価高の影響も無視できません。物価高とは、一般的な価格水準が上昇する現象であり、これは様々なコストに影響を及ぼします。人件費の上昇やオフィス賃料の増加、エネルギーコストの上昇などが挙げられます。これらのコストは直接的に情シスの運用に関わるため、全体の運用コストを押し上げる要因となります。物価高の指標はいくつかありますが、今回は企業間で売買される物品の価格変動を示す「企業物価指数」を参考に動向を確認してみましょう。

出典:日本銀行「企業物価指数(2024年6月速報)」

いずれの指標も大きく伸びていることが一目瞭然ではないでしょうか。、日本国内での人件費の上昇は、情シスの運用コストに大きな影響を与えます。IT技術者の人材不足が深刻化する中、優秀な人材を確保するためには高い給与を提示する必要があります。また、オフィス賃料の増加やエネルギーコストの上昇も、情シスの運用コストを押し上げる要因となります。

このように、円安と物価高がITコストに与える影響は多岐にわたります。企業はこれらのコスト上昇に対処するために、効率的なリソース管理やコスト最適化の取り組みを進める必要があります。例えば、クラウドサービスの利用を最適化し、無駄なリソースを削減することが重要です。また、複数のサプライヤーと取引を行い、価格変動に対する対応力を高めることも有効です。

基幹ITインフラ(IaaS、PaaS等)のコスト増加

IaaS(Infrastructure as a Service)は、企業がクラウド上でインフラを利用する際の基本的なサービスです。代表的なサービスとして、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureが挙げられます。これらのサービスは、円安の影響を受けやすいです。例えば、AWSやAzureの料金は米ドルで設定されているため、円安が進行すると日本円での支払い額が増加します。これらはM365などのSaaSレイヤーに属するサービスも同様です。

円安によるIaaSの価格上昇は、情シスの運用コストに大きな影響を与えます。例えば、AWSの料金が1ドルあたり100円から110円に上昇した場合、同じサービスを利用するコストが10%増加することになります。これは、企業の予算に直接的な負担をもたらします。また、円安による価格上昇は、長期的な契約や予算計画にも影響を及ぼし、計画の見直しを迫られることになります。

物価高の影響も大きいです。物価が上昇すると、データセンターの運営コストやエネルギーコストも増加します。これにより、サービスプロバイダーはコストを転嫁せざるを得ず、結果として利用料金が上昇します。例えば、AWSやAzureはデータセンターの運営に多大なエネルギーを必要としますが、エネルギーコストが上昇するとその分が利用料金に反映されることになります。

IaaSのコスト増加に対処するためには、効率的なリソース管理やコスト最適化ツールの活用が求められます。例えば、クラウドサービスの利用状況を定期的に監視し、無駄なリソースを削減することが重要です。また、スポットインスタンスの活用やリザーブドインスタンスの利用など、コストを抑えるための具体的な方法も検討する必要があります。

IaaSのコスト増加を抑えるためには、クラウドプロバイダーとの契約条件の見直しや、複数のプロバイダーを活用するマルチクラウド戦略の導入も有効です。これにより、価格変動に対するリスクを分散し、コストの安定化を図ることができます。

情シスの現場と経営それぞれの主な課題

情シス現場担当者にとって、円安や物価高の影響は直接的な負担となります。IT機器の価格が上昇すれば、新規導入や更新の計画が遅れ、運用効率が低下します。また、限られた予算内でのやりくりが求められるため、ストレスも増大します。スキルアップやトレーニングも必要となり、これらがさらにコストに影響を与える可能性があります。

情シス担当者の視点

現場では、円安や物価高に対処するための具体的な対策が求められます。例えば、既存のIT機器の延命措置や、コスト効果の高い代替品の導入などが考えられます。また、スキルアップやトレーニングの重要性も増しています。新しい技術やツールの導入に伴い、現場担当者はそれらを効果的に活用するための知識やスキルを習得する必要があります。これにより、運用効率を維持しつつ、コストの増加を抑えることが可能です。

経営者の視点

経営視点から見ると、予算管理の課題が浮上します。コストの上昇は企業全体の経営戦略に影響を及ぼし、利益率の低下を招く可能性があります。そのため、経営層はコスト削減策を検討し、投資対効果の評価を行う必要があります。

経営層は効率的なリソース管理やプロジェクトの優先順位付けを行うことが求められます。また、リスク分散の観点から、複数のクラウドプロバイダーを利用するマルチクラウド戦略の導入や、長期的な契約を見直すことも重要です。これにより、円安や物価高の影響を最小限に抑えつつ、持続可能な運用体制を築くことが可能です。

具体的な対策と提案

円安や物価高の影響を最小限に抑えるための具体策として、以下のような方法があります。

サービスの見直し

まず、コスト削減のためにクラウドサービスの利用を最適化し、無駄なリソースを削減することが重要です。例えば、定期的なリソースの見直しや、使用頻度の低いリソースの停止を行うことが有効です。

リスク分散

リスク分散の方法としては、複数のサプライヤーと取引を行い、価格変動に対する対応力を高めることが挙げられます。これにより、特定のサプライヤーに依存するリスクを軽減し、コストの安定化を図ることができます。また、クラウドプロバイダーを複数活用するマルチクラウド戦略も有効です。これにより、各プロバイダーの価格競争力を活用し、コスト削減を実現します。

システムの標準化

長期的な戦略として、ITインフラの標準化や自動化の推進が重要です。これにより、運用効率を高め、コストを削減することが可能となります。例えば、インフラのコード化や自動化ツールの導入により、手動作業を減らし、運用コストを削減することができます。

企業はこれらの対策を通じて、円安や物価高の影響を乗り越え、持続可能な運用体制を築くことが求められます。

まとめ:円安物価高に強い情報システムを作ろう!

円安と物価高は情シスの運用コストに大きな影響を与えますが、適切な対策を講じることでその影響を最小限に抑えることが可能です。現場と経営の両視点から、具体的なコスト削減策やリスク分散の方法を検討し、長期的な戦略を立案することが重要です。今後も経済状況の変動に対応できる柔軟な運用体制を築くことが求められます。

企業は、効率的なリソース管理やコスト最適化の取り組みを進めることで、円安や物価高の影響を克服し、持続可能な成長を実現することができます。現場と経営が一体となって課題に取り組むことで、より強固なIT運用体制を築くことができるでしょう。

著者:犬を飼っているゴリラ

大手IT企業に入社し、フロントエンド、PFシステムの開発に従事。その後、IaaSサービスなどの各種サービス事業開発に携わったのち、大手HR・販促事業会社に転職した。2018年にMBAを取得し、現在も国内大手メーカーの新規事業企画、プロダクトオーナーなどを担っている。

(TEXT:犬を飼ってるゴリラ、編集:藤冨啓之)

 

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