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2025年は、情シスにとって「想定していたリスクが、現実として起きた」一年だったと感じています。
サイバー攻撃による大規模障害と物流麻痺、すさまじいスピードで進化する生成AI、そして先送りされたままの構造的課題。
ここでは、2025年を象徴するニュースを振り返りながら、情シスとして何を得て、どう捉えたのかを整理します。
| ニュースタイトル | URL |
| アサヒのサイバー攻撃は中小企業も他人事ではない!GMOの調査から読み取れる実態とは | https://josys.wingarc.com/josyseyenews41 |
| アサヒ、全システム停止も売上9割維持の奇跡…脱システム依存で見せた驚異の現場力 | https://biz-journal.jp/company/post_392577.html |
| ITシステム「2025年の崖っぷち」。新年に情シスが意識すべき課題と取り組み方 | https://josys.wingarc.com/issues-that-information-systems-should-be-aware-of-and-how-to-tackle-them |
| 【2025最新版】生成AI市場、最新動向と2025年の成功に向けたステップ | https://www.dataadventure.co.jp/post-1945/ |
| 生成AI導入企業の割合【2025年最新】日本の現状と成功のコツ | https://taskhub.jp/useful/generative-AI-company-adoption-rate/ |
アサヒグループやアスクルへのランサムウェア攻撃は、物流停滞という形で社会全体に大きな影響を及ぼしました。
このニュースで情シスとして注目したいポイントは、「システムが停止しても、ビジネスが止まらなかった」ことです。
アサヒグループでは、システム障害への対応として、一時的にFAXやExcelなどのアナログ手段による手作業に切り替え、通常時の約9割にあたる売上を維持しました。
この対応を支えたのは、現場に残っていたアナログ時代の業務知見でした。
もし、こうした知見がすでに失われていたらどうなっていたでしょうか。
今回の事例は、完全なデジタル依存が持つリスクを、あらためて情シスに問い直す機会になったと感じています。
2025年最大のトピックの一つとして語られていた「2025年の崖」。
SAPの保守期限が2027年まで実質的に猶予ができたことで、多くの企業はひとまず2025年の崖から落ちずに済みました。
しかしこれは、問題が解決したというよりも、先送りしただけに過ぎない状態です。
延長保守に伴うコスト増加、レガシーシステムを理解するエンジニアの引退など、課題は膨らみ続けています。
2025年は、すべての生成AIニュースを追い切ることが不可能なほど、次々と新しいモデルやサービスが登場した一年でした。
企業への導入も、2024年までの慎重姿勢から一転し、「使わないほうがリスク」という空気感すら漂い始めています。
その一方で、現場では「どの業務をAIに任せられるか」「最終的な判断は誰が持つのか」といった基準が曖昧なまま、導入したものの十分に活用しきれないケースも少なくありません。
2025年を終えて見えてきたのは、「AIを導入したかどうか」ではなく、AIが導き出す答えに、自社のナレッジをどう掛け合わせ、人がどう意味づけをしていくかといった極めて本質的な問いでした。

サイバー攻撃を受けたアサヒグループは、FAX、Excel、紙の伝票といった旧来の方法で受注・出荷業務を継続しました。
この非常時に現場を支えたのは、長年の業務経験があるベテラン社員が持っていた「アナログ時代のノウハウ」だったそうです。
一見すると時代遅れにも思えるやり方ですが、ここで注目したいのはシステムが止まっても、業務そのものは止めなかったという事実です。
この出来事は、情シスとして「完全なデジタル依存」がもたらすリスクを、あらためて突きつけるものでした。
現場に昔のやり方を知る社員がいる間は何とかなるかもしれません。しかし、年月を経ればその知見を持つ人材は確実に減っていきます。アナログ対応を一度も経験したことのない社員だけになったらどうなるでしょうか。「もう使わないから」とFAXを撤去してしまったら、本当に困らないのでしょうか。
日本はサイバー攻撃だけでなく、自然災害のリスクとも常に隣り合わせです。
いつインターネットやクラウドサービスが使えなくなるか分かりません。
そうした状況下でもビジネスを止めないための仕組みを用意しておくことも、広い意味でのセキュリティ対策だと考えるようになりました。
2026年からの情シスには、「非常時に機能するアナログを、意図的に設計し、残していく」ことも役割の一つとして求められているのではないでしょうか。

多くの企業で、生成AIを業務に活用するための取り組みが本格化しています。
2025年は、生成AIを「使うかどうか」のフェーズを終え、「どう使うか」を問われた一年だったと感じています。
生成AIを自社にとって本当に頼れるパートナーにするためには、何が必要なのでしょうか。
それは、どのAIツールを使うかよりも、要件定義の現場で情シスが培ってきた「ヒアリング力や整理力」にあると私は考えています。
現場でヒアリングを行ったことがある方なら、思い当たる節があるかもしれません。
業務についての質問を投げた時、こちらが抽象的な質問を投げてしまうと、返ってくる回答もまた抽象的なものになりがちです。
どこか「ふわっ」としていて、実際の業務像が見えてこない。
日々の作業はこなせていても、その手順が言語化されていないケースは決して少なくありません。
これは、生成AIに対してもまったく同じことが起こります。
「ふわっ」としたプロンプトには、ありきたりで浅い回答か、あるいは的外れなものしか返ってきません。
生成AIは、与えられた情報と問いの質に忠実に反応するような設計になっているためです。
だからこそ重要になるのが、いかに芯をとらえた質問をするか、いかに前提条件や背景を整理し、必要な情報を与えられるか。
これは、情シスがこれまで要件定義の現場で繰り返し求められてきた力そのものです。
質問力、意図を正確に伝える力、そして表には出ていない課題の本質を見抜く力。
生成AIの活用は、これらの力が不要になるどころか、より重要なものとなるでしょう。

これまで振り返った2025年のニュースや経験を通じて、あらためて感じたのは、技術そのものだけでなく、それを使いこなす「人」と「現場」が重要で、アナログの価値は決して軽視できないという事実でした。
長年積み上げられてきた現場の知見は、完全デジタル化を進めれば簡単に消滅してしまいます。いざというとき、デジタルだけに依存するやり方が大きなリスクになることは、2025年の出来事が明白に示しました。
では、2026年、デジタルの恩恵を最大限に活かしながらも、リスクヘッジとしてアナログをどう残し、どう活かしていけばよいのでしょうか。
ここでは、学びと実践をセットにした4つのTipsを提案します。
現場ヒアリングでは、質問力も必要ですが、それ以上に相手の意図や考えを引き出す「傾聴力」が重要です。
傾聴テクニックを学び、実際に現場ヒアリングで意識的に使ってみましょう。
うまくいった点や違和感を覚えた点をメモして、次のヒアリングで試す。この繰り返しが、スキルを確実に身につけるポイントです。
話を聴く=信頼関係の構築です。
ヒアリングを通して、現場とより一層強い連帯関係を築けるでしょう。
業務の「ふわっとした情報」を整理し、要件定義やAIプロンプトに落とす力は今後ますます重要となるスキルです。
現場ヒアリングや資料の作成のなかで、具体化と抽象化を繰り返すことで、情報整理力と伝達力を同時に鍛えられます。
数字やツールだけではわからない現場の本質をつかむために、「これは具体的に何の話か」「一段上げると何と言えるか」を問い続けてみてください。
生成AIは、情報の整理や具体化・抽象化の思考を助ける強力なパートナーになります。
ヒアリングによって情報を引き出し、AIを活用して現場の言葉を構造化し、記録し続ける。
この積み重ねが、アナログな現場の知見を資産として残すことにつながります。
現場の言葉や感覚を記録する作業は膨大で、人手だけでは限界があります。
生成AIを「整理係」「壁打ち相手」として使うことで、情シスの負担を減らしながら、知見を未来につなげられます。
人の行動や意思決定の背景を理解すると、ヒアリングや調整がスムーズになります。
心理学の基本を知ったうえで、相手の立場や優先順位を意識するだけでもコミュニケーションの質は大きく変わります。
「この人にはこう伝えると動きやすい」といった気づきを積み上げて、情シスとしての現場力を上げていきましょう。
2025年は目まぐるしい技術革新と、恐れていたセキュリティインシデントが現実のものとなった一年でした。情シスの皆さんは、業務面でもメンタル面でも、目が回るほど忙しかったのではないでしょうか。
セキュリティに関する上層部からのプレッシャー。生成AIの登場によって今までの仕事のやり方が通用しなくなるのではないかという焦り。こうした感覚は、情シスに限らず他部署でも同じだったかもしれません。
2026年も、技術は止まることなく進化し続けるでしょう。それに伴いリスクの質や形も変わっていくことは容易に想像できます。その中で、情シスの役割は表面的には変化しても、なくなるわけではありません。
働くのが人であり、お客様もまた人であり続ける限り、業務の中心に「人」がいるという前提は変わらないと私は考えています。だからこそ、「聴く」技術や「人に伝える」技術は、時代が変わっても価値を失わない普遍的なスキルであり続けます。
新しい技術をビジネスに活かすために、それを「人がどう使うのか」を設計すること。
それは、これからも情シスに求められ続ける役割ではないでしょうか。
2026年は新技術の情報収集に目を向けるだけでなく、2025年のニュースや経験を自分たちの仕事に引き寄せて「血肉」にし、意識的に「足元」を固める一年にしてみてはいかがでしょうか。
(執筆:おちあいなおこ、編集:藤冨啓之)

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