INDEX
CopilotがOneDriveに実装されてからおよそ1年。2025年5月、MicrosoftはCopilot in OneDrive の新たな機能を発表しました。
これまでのCopilot in OneDriveは、保存されたファイルを分析して、要約を作成したり、ファイルの内容について質問に答えたりすることで、新しいファイル管理の方法を提案してきました。
新しい機能では何ができるようになったのでしょうか。
OneDriveに保存されているWord文書、PDF、Teams会議の録音を要約して、音声で出力できるようになりました。
音声スタイルは、ナレーターが読み上げる「サマリースタイル」と、2人のナレーターが掛け合いで解説する「ポッドキャスト」があります。
議事録をオーディオオーバービューで要約して、移動時間や作業中に聞いて確認したり、音声での共有が効果的な場面に活用したりできます。
(2025年5月現在、英語版のみ利用可能です。)
これまで画像で保存された文書はCopilot in OneDriveでは認識できませんでした。しかし今回のアップデートで、PDFや画像ファイルも読み取れるようになりました。さらにフォントテキストに加え、精度は下がるものの手書き文字にも対応しています。
また、グラフの画像をCopilotに読み取らせれば、グラフデータをCSV形式に変換することもできるようになりました。
過去にスキャンした画像PDFやFAXデータも有効活用できますね!
共有リンクの発行後にアクセス権の変更依頼。再発行して、訂正文を書いて、送付して…という経験、情シス担当者であれば、一度は経験されたことがあるのではないでしょうか。
新機能の「ヒーローリンク」では、共有リンクの発行後に、再発行することなくアクセス権限を変更できるようになりました。プロジェクトのフェーズごとにアクセス権を調整するといった運用が可能になります。
さらにCopilotがファイルの要約を作成し、その要約文をリンクに添付して共有できるようにもなりました。受け取った側も「このファイルに何が書いてあるのか」を開く前に確認できます。
Copilot in OneDriveは、個人向け・企業向け・教育向けのプランで利用可能です。
• Microsoft 365 Personal
• Microsoft 365 Family
• Microsoft 365 E3 / E5
• office 365 E3 / E5
• Microsoft 365 Business Premium
• Microsoft 365 A3 / A5(教育機関向け)
Microsoft 365 Business Standardなど、Copilot非搭載のプランを利用している場合は、別途「Microsoft 365 Copilot」(¥4,497/ユーザー・月額・年間契約)のアドオン契約が必要です。
一見すると、Copilot Pro(¥3,200/月)の方が、Microsoft 365 Copilot(¥4,497/月)より安価で手軽に導入できるように見えるかもしれません。しかし、企業で使うなら断然「Microsoft 365 Copilot」をおすすめします。なぜなら、セキュリティとデータ保護に圧倒的な差があるからです。
Microsoft 365 CopilotはAI導入の障壁となっている情報漏洩の不安への対策がされていますが、Copilot Proやフリープランの Microsoft Copilotではされていません。
ビジネスでAIを利用するのであれば、より堅牢な環境である、Microsoft 365 Copilotが使えるプランの契約を強くおすすめします。
「Copilot in OneDrive」を導入する際に、情シス担当者が最初に取り組むべき3つのステップを紹介します。これを押さえておけば、導入後のトラブルを最小限に抑えられます。
全社一斉導入はリスクが高いため、まずは、少人数のチームやプロジェクトから導入をしましょう。
●課題や改善ポイントが把握しやすくなる
限定された範囲で試せるため、予期せぬ問題が発生しても対応が取りやすくなります。また、運用しながらワークフローを修正したり、セキュリティポリシーの見直しをしたりと、試行錯誤しながら、社内の基盤を整えることができます。
●コストと工数を最適化できる
Microsoft 365 Copilotが使えるプランに加入していない場合、追加でライセンス費用がかかります。1ユーザーあたり年間約54,000円は決して安くないコストです。
全社一斉導入では、活用しないユーザーの分までコストがかかる可能性があります。まずは小さく始めて、活用方法や社内ルールといった「AI活用文化」ができてから、大規模導入を検討しても遅くありません。
セキュリティの要は、適切なアクセス権限の設定です。
OneDriveにアクセス可能なユーザーやデバイスを「Microsoft Entra ID(旧 Azure AD)」で一括管理しましょう。
●アクセス権の管理
• ユーザーごとにアクセス権を与える(OneDriveのファイルやフォルダーごとに閲覧権限を付与)
• グループごとにアクセス権を与える(セキュリティグループを作成)
権限設定が面倒などの理由で、不必要に高いアクセス権限をユーザーに与えていませんか。
高権限のユーザーが多い=攻撃者にとっての標的が増えることになり、リスクを高めてしまいます。そのユーザーに管理者権限は必要か、機密情報へのアクセスは必要なのか、今一度見直してみましょう。
●アクセス許可
• 特定のデバイスからのみアクセスを許可
• 多要素認証(MFA)を導入(OneDrive にアクセスする際、パスワード+スマホ認証などの追加認証を要求)
• 特定のネットワークからのみアクセスを許可
出入り口を小さくしておくことも大切な施策です。
OneDriveにアクセスできるデバイスやネットワークを制限し、さらに認証レベルも上げるとより守りが強固になります。
●外部共有の制限方法
• ゲストユーザーとのファイル共有を制限する
• 共有リンクに有効期限を設定する
●監査ログ
監査ログでアクセス履歴を確認し、不正なログインがないかチェック
「Copilot in OneDrive」導入の最大の懸念は「AIに機密情報を読まれて漏洩するのでは?」ということではないでしょうか。
機密情報の漏洩は、企業にとって計り知れない損害を与える可能性があります。特定の機密データを保護するには「Microsoft Purview」を活用しましょう。
Microsoft Purviewのデータ損失防止(DLP)の設定を行うと、特定のデータを Copilotの AI処理に含まれないように制限できます。
1.Copilotの処理対象から除外するDLPポリシーを作成
• Microsoft Purviewポータルにアクセス
• 「データ損失防止」→「ポリシー」→「新しいポリシーの作成」
2.Copilotの処理対象から除外するデータの種類を選択
• ポリシーの適用範囲と例外を設定
(ポリシー作成後、最大4時間で Copilotに反映されます)
3.機密ファイルの設定をする
• 機密情報を含むファイルに秘密度ラベルを設定
(読み取らせないファイルに「秘密度ラベル」を適用して、Copilotが機密ファイルの内容を処理しないようにします)
4.定期的に監査ログを確認
• DLPポリシーが機能しているか
• DLPポリシー違反の通知がきたら、速やかに原因を分析、改善
5.ユーザー教育と組み合わせて防御を強化
機密情報の定義を社内で明確にしましょう。違反の検出条件(個人情報、製品コード、内部コードなど)を細かく設定すると、保護の精度が大幅に向上します。
近年の AI技術の急速な進歩の中でも、Copilotは ChatGPTなどの競合と比較して遅れをとっている印象があったかもしれません。しかし、今回の OneDriveとの連携強化を含む最新のアップデートにより、特に企業が重視するセキュリティ面と機能面で大幅な改善が見られます。
「AIを導入したいけど、情報漏洩が不安…」そんな情シス担当者の悩みに対して、Microsoft 365 Copilotは最も現実的で安全な選択肢になりつつあると言えるでしょう。本記事で紹介した3つのステップを踏まえ、安全かつ効果的な AI活用の第一歩を踏み出してみませんか?
著者:おちあいなおこ
製造・卸・物流を扱う企業で情報システム部に所属。現場とともに走る情シスを目指し、日々現場に足を運び情報収集にいそしむ。基幹システム、Webアプリケーションの選定・導入・運用経験多数。もっと多くの企業の業務を改善したいという想いから独立。バックオフィスの伴走型支援を中心に、Webライターとしても活動中。
(TEXT:おちあいなおこ、編集:藤冨)
月曜日の朝にお送りする「情シス『目』ニュース」では、日々発信されるさまざまなトピックスを情シス・エンジニアの方々向けに「再解釈」した情報を掲載中。AI、働き方、経済など幅広いニュースをピックアップし、業務に役立つほか、つい同僚に話したくなる面白い話題まで身近で自分事化しやすくお届けします。
本特集はこちら30秒で理解!フォローして『1日1記事』インプットしよう!