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SAPとよく耳にするが、実際はどのようなシステムなのか知らない方も多いでしょう。SAPの導入を検討しても、SAPを理解していなければ、導入に踏み切れませんよね。
そもそもSAPとは、ドイツに本社をおくソフトウェア会社やその会社が提供するシステムを指します。この記事では、SAPがどのようなものなのか、システムの特徴や導入するメリット・デメリットと一緒に解説します。
SAPとは、ドイツに本社があるソフトウェア会社です。会社名であるSAPは、「System Analysis Program Development」の頭文字を取った略語がつけられました。
SAPは世界中の企業にERPシステムを提供しているため、SAP社の提供しているシステムのことをSAPと呼ぶこともあります。SAPと見ると「サップ」と呼びたくなりますが、そうは呼びません。SAPは「エス・エー・ピー」と呼びます。
SAPはソフトウェア会社として、1972年に創業された50年以上の歴史がある企業です。本章では、以下の項目に分けて、SAPの歴史を解説します。
それでは、SAPの歴史を海外と日本でそれぞれ見ていきましょう。
SAPは1972年に創業された後、翌年の1973年に世界初の統合型業務基幹システムの「SAP R/1システム RF」をリリースしました。
さらに、1979年には企業の業務に必要な多数の機能が搭載されている「SAP R/2 メインフレームシステム」を発表しています。その後も、「SAP R/3」や「SAP HANA」などのシステムをリリースし、世界中の企業で利用されるシステムを開発しています。
1990年代には、プログラムの関係で2000年になるとコンピュータが誤作動を起こすと予想された2000年問題の影響もあり、世界中の企業でシステムを新しくする動きが活発になりました。その結果SAPの普及が増え、世界中でERPパッケージが求められたことにより、SAPは世界一のシェアを獲得しました。
SAPは1992年に日本法人を設立し、日本に進出しました。
前述した2000年問題の影響は、日本国内でもあったため、1990年代には国内の企業のシステムを新しくしたいニーズが高まっていました。そこでSAPが日本に進出したことが、SAPが日本でも普及した要因だと考えられます。
前章では、SAPの歴史を解説しましたが、SAPを語るうえでERPの存在は欠かせません。
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の頭文字を取った略語で、企業の経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」を統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法や概念のことです。
SAPでは、ERPを実現するためのシステムをメインに提供しているため、SAPを利用している方であれば、「SAP=ERP」のイメージがあるかもしれません。それくらい、SAPとERPは切り離せない関係があります。
SAPは、ERPを実現するためのシステムをメインに提供しているとお伝えしましたが、SAPが提供するERPを「SAP ERP」と呼びます。SAP ERPの特徴としては、以下の3つが挙げられます。
次に、SAP ERPの3つの特徴をそれぞれ解説します。
SAP ERPは、世界中の企業で導入されているシステムのため、日本以外にも世界中のさまざまな企業への導入実績があります。
例えば、調味料で有名な味の素株式会社がSAP ERPを導入していることは有名です。
このように、SAP ERPは世界中の企業で導入されており、国内でも大手企業での採用実績もあるシステムです。
SAP ERPは企業の業務に必要な充実した機能が標準搭載されています。
そのため、社内のさまざまな課題に対応できるシステムとなっています。また、SAP ERPは多くの企業での採用実績があるため、さまざまな企業課題を解決してきた機能を利用できると考えると、SAP ERPの魅力が伝わるでしょう。
SAP ERP複数のタイプのERPを提供しています。そのため、自社に合わせたインフラ展開が可能です。
例えば、クラウド上にシステムを構築するクラウド型と、自社にサーバーを設置するオンプレミス型があります。このように、自社の課題や環境に合わせてタイプを選べることは、SAP ERPの大きな特徴です。
前章ではSAPの3つの特徴を解説しましたが、SAP ERPの導入には、以下の4つのメリットがあります。
それでは、SAP ERP導入の4つのメリットをそれぞれ解説します。SAP ERPの導入を検討している場合には、ぜひ参考にしてみてください。
SAP ERPには、日本を含めた世界中の企業で業務を標準化してきた実績があります。業務に必要な承認を得るために、複数の段階の審査が必要になることも多く、効率の悪い業務環境になっている企業は少なくないでしょう。
SAP ERPの導入によって業務を標準化すると、承認を得るための工数が減るため、業務の効率が向上します。また、業務の標準化は属人性の解消にも繫がります。そのため、社員教育や担当者が退職した後の対応も容易になるでしょう。
SAP ERPを導入すると、社内の各部門のデータを一つのシステムで管理できます。データを一元管理すると、データの連携や共有を速く行えるため、業務の効率化に繫がります。
また、一元管理したデータをリアルタイムでの反映が可能なため、効率的にデータ処理を行えるだけでなく、経営の意思決定も迅速に行えるでしょう。
SAP ERPでは、「誰が」「いつ」「どの業務を行ったのか」の作業履歴を管理できます。
作業履歴を管理できると、不正なアクセスやデータの改ざんなどの不正行為を確認できるだけでなく、従業員への抑止力にもなります。そのため、内部統制の強化が可能です。
SAP ERPはシェア率が高く、世界中で導入実績があるシステムです。
そのため、SAP ERPを導入すると、信頼性の高いシステムを採用している企業と評価を高めやすくなります。また、海外の企業と取引を行う場合にも、海外でも普及しているシステムを採用しているため、相手企業も安心して取引を行えるでしょう。
SAP ERPの導入にはメリットだけでなく、デメリットもあります。SAP ERP導入のデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
デメリットを理解した上で、SAP ERPの導入を検討しましょう。それでは、SAP ERP導入の3つのデメリットをそれぞれ解説します。
初期費用が高いことは、SAP ERPの大きなデメリットになるでしょう。SAP ERPの導入には、以下の費用がかかります。
そのため、SAP ERPの導入にあたって、ある程度の予算を用意しなければなりません。
SAP ERPには豊富な機能が搭載されていますが、機能が多いことから、システムの設定が複雑です。機能や設定が複雑なことから、システムを使いこなすのが難しく、社内での普及に時間がかかるでしょう。
さらに、SAP ERPの導入には独自のプログラミング言語である「ABAP」を扱える必要があります。そのための人材を雇ったり、育成したりすることも必要でしょう。
SAP ERPは、システムを導入しただけでは意味がありません。
SAP ERPを導入し、業務を効率化させるためには、SAPを理解した上での運用が重要です。そのため、SAP ERPのマニュアルの整備や知識のある人材を担当者として配置するなどの対策をするとよいでしょう。
SAP ERPのメリットやデメリットを解説しましたが、SAP ERPには、主に以下の機能が搭載されています。
主な機能 |
説明 |
SD(Sales and Distribution)販売管理用モジュール |
販売・在庫・物流部門の情報をリアルタイムで管理する機能 |
MM(Material Management)在庫購買管理用モジュール |
在庫管理機能と資材の購買から発注、入庫などの購買調達のデータを管理する機能 |
WM(Warehouse Management)倉庫管理用モジュール |
入出庫や倉庫内での在庫の移動などの保管管理機能 |
PP(Production and Planning)生産計画、生産管理用モジュール |
生産計画や製造指図など製造業務に関する機能 |
PM(Plant Management)プラント保全用モジュール |
検査・予防保全・修理の3つから、設備をメンテナンスする機能 |
HR(Human Resources)人事管理用のモジュール |
人事管理業務に関する機能 |
PS(Project System)プロジェクト管理用モジュール |
工程管理から原価や売り上げの管理を行う機能 |
FI(Financial accounting)財務会計用モジュール |
決算書の作成を含む財務会計の処理を行う機能 |
CO(Countrolling)管理会計用モジュール |
社内の原価管理を行う機能 |
RE(Real Estate)不動産会計用モジュール |
不動産の種類や運営方法に合った管理業務を行う機能 |
IM(Invest Management)設備予算管理用モジュール |
研究開発の投資予算と設備実績を管理する機能 |
CA(Cross Application)クロスアプリケーション用モジュール |
各機能を同時に使用する機能 |
また、SAP ERPでトラブルが起きた際には、「sap support portal」に問い合わせると、トラブルを解決できます。
SAPに搭載されている主な機能を紹介しましたが、SAPが提供する製品には、複数の種類があります。そこで本章では、以下の項目別に、SAPの提供する製品の種類を解説します。
それでは、SAPの提供する製品の種類をそれぞれのパターン別で解説します。
ERPシステムには、以下の5つの製品があります。
次に、ERPシステムの5つの製品をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
SAP S/4HANAは、高速なデータ処理が特徴の「SAP HANA」をデータベースとして採用した製品です。
使いやすくシンプルなUXで作られているため、作業の効率化をサポートします。また、データ分析やレポーティングが可能な点も特徴です。SAP S/4HANAは、社内にサーバーを設置するオンプレミス型を指し、クラウド版であるSAP S/4HANA Cloudもあります。
RISE with SAPは、SAP S/4HANA Cloudを軸にした、包括的にソリューションを提供するサービスです。
また、RISE with SAPを利用すると、オンプレミス型で構築したSAP ERP や SAP S/4HANAなどのSAP製のERPを安全でスムーズにクラウド型へ移行できます。
GROW with SAPは、SAP S/4HANA Cloud Public Editionを軸にした、包括的にソリューションを提供するサービスです。
前述したRISE with SAPと名前が似ていますが、RISE with SAPはSAP S/4HANA CloudのPublic EditionとPrivate Editionの2種類が選べ、GROW with SAPはPublic Editionのみの違いがあります。
SAP Business ByDesignは、初期費用を抑えた短期間での導入を実現した製品で、主に以下の機能が搭載されています。
2007年から世界160ヵ国以上の企業に導入されており、実績が豊富です。12,000の拡張機能を利用でき、拡張機能は継続的に開発されています。
SAP Business Oneは、主に中小企業向けに提供されている製品です。
豊富な標準機能を搭載しながら、短期間・低コストでの導入が可能です。また、会社の成長に応じて機能を拡張できるため、現在成長中の企業でも導入や継続的な利用をしやすいシステムとなっています。
SAP製品の中で、ERPシステムの製品を紹介しました。次に、ERPシステム以外の製品として、以下の9つを紹介します。
それでは、ERPシステム以外の9つの製品をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
SAP Customer Experienceは、SAPが提供する5つのクラウドサービスから作られた管理システムです。SAP Customer Experienceを構成しているクラウドサービスは、以下の5つです。
SAP Customer Experienceの導入によって、カスタマーエクスペリエンス の向上に繫がります。
SAP BW/4HANAは、以前提供されていたSAP BWよりも計算処理が速くなったデータウェアハウスプラットフォームです。データを管理するための主な機能として、以下の4つがあります。
名前に「HANA」とあるように、SAP BW/4HANAはSAP HANA上でのみ動作します。
SAP BusinessObjectsは、25年以上・130を超える国々で使われた実績のある製品です。データに関する機能として、以下の3つが一元化されています。
そのため、さまざまなデータを用いた分析結果をリアルタイムで得たい場合には、おすすめのシステムです。
SAP Analytics Cloudは、データ分析に必要な機能が一つになったシステムです。搭載されている機能としては、主に以下の5つが挙げられます。
SAP Analytics Cloudを導入すると、データ分析やシミュレーションを行えるため、迅速で高精度な意思決定に繫がります。
SAP Concurは、クラウド上で経費や請求書を管理できるシステムです。スマートフォンのカメラで撮影した領収書のデータから、経費や交通費を生産できるだけでなく、以下のサービスとの連携も可能です。
さまざまなアプリケーションと連携できることから、経費精算の自動化と効率化が可能です。
SAP Aribaは、間接材の購買を効率化できるシステムです。間接材とは、売上や利益には直結しないが、業務上で必要な購買品です。クラウド上で間接材の購買管理ができるため、業務の効率化やコスト削減に繫がります。
SAP SuccessFactorsは、クラウド上で人事業務を行えるシステムです。主に人事に関する以下のデータを管理できます。
人事業務を一元化できるため、人事の負担や人件費の削減につながります。
SAP Fieldglassは、データを使った人材採用を実現するシステムです。以下の機能から、人材採用業務を最適化させます。
人材採用に課題がある場合には、導入を検討したいシステムの一つです。
SAP BTPは、SAPアプリケーションを開発するためのプラットフォームです。BTPは「Business Technology Platform」の頭文字を取った略語です。JavaやJavaScriptのプログラミング言語を用いたアプリケーション開発が可能で、データの管理・分析やAI機能が搭載されています。
SAP社の提供している製品を紹介しましたが、SAP社はSAPシステムに関する資格を発行しています。それが、SAP認定コンサルタント資格です。
SAP認定コンサルタント資格は、SAPシステムに関する知識や技術があることを示すため、取得すると以下のメリットがあります。
SAPは日本を含む世界中の企業で導入されているため、SAP認定コンサルタント資格は、国内だけではなく海外でも有効に働くでしょう。
SAPの「2027年問題」とは、2027年12月にSAP ERPのサポートの終了にともなって、SAP ERPを導入している企業に大きな影響がある問題です。
もともとは2025年で終了予定だったサポートが2027年に延長されたため、2027年問題と呼ばれていますが、以前は2025年問題と呼ばれていました。
2027年問題の対策としては、SAP S/4HANAへの移行や代替製品への切り替えなどが挙げられます。
SAPとは、ドイツに本社があるソフトウェア会社です。しかし、SAP社の提供しているシステムが有名であることから、SAP社の提供している製品をSAPと呼ぶことがあります。SAPを「サップ」と読んでしまいがちですが、正しい読み方は「エス・エー・ピー」です。
SAPには、世界中の企業へ導入実績があり、充実した機能が標準搭載されている特徴があります。また、さまざまな製品を提供しているため、自社に合ったシステムを選択できます。ぜひこの記事を参考に、SAPの導入を検討してみてください。
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