キーワード

ダウンタイムの被害額1億円以上も。頻度・時間を知り「対策」を考えよう

「システムは安定して動いて当たり前」――そう思っていませんか? しかし現実は厳しいものです。サイオステクノロジーが2025年に実施した調査によると、約半数の企業が過去3年間で複数回のシステム障害を経験し、その最長ダウンタイムは7割超が「1時間以上」に及んだとのこと。さらに衝撃的なのは、障害による損失額が1,000万円を超えるケースが約4社に1社、1億円以上に至るケースも6.3%存在するという事実です。

情報システム部門の皆様にとって、この数字は決して他人事ではないはずです。むしろ「あるある」と頷いてしまった方も多いのではないでしょうか。

一方で、2026年の情報システム業界は大きな転換期を迎えています。AIを活用したセキュリティの高度化、ゼロトラストアーキテクチャの本格普及、そして自治体システム標準化に代表されるクラウド移行の加速――。これらの動きは、中小企業の情報システム部門にも無関係ではありません。

今回は、システム障害の実態を詳しく読み解きながら、直近3ヶ月の業界動向も踏まえた「これから取るべき対策」を一緒に考えていきたいと思います。

ランサムウェアの侵入経路第一位「VPN機器」の対策状況は?。運用業務で改善できるファーストステップ

ランサムウェアの侵入経路第一位「VPN機器」の対策状況は?。運用業務で改善できるファーストステップ

続きを読む 》

■情シスニュース「キャッチアップポイント」

①システム障害は「例外」ではなく「前提」として扱うべき時代に。もはや「うちは大丈夫」という楽観論は通用しない時代になりました。
②2026年はゼロトラストとAIセキュリティが本格化。AIエージェントの普及により、AIへの認証・アクセス制御も新たな課題として浮上しています。
③クラウド移行とレガシーシステム刷新が待ったなし。自治体システムの標準化・ガバメントクラウド移行が進み「2025年の崖」を乗り越えるべくクラウド移行が加速しています。民間企業でも2026年度以降は同様の対応が求められます。

         

衝撃の実態──約半数の企業が複数回のシステム障害を経験

「また障害発生のアラートか…」という経験、皆様にもあるのではないでしょうか。サイオステクノロジーの調査が明らかにしたのは、システム障害がもはや特別なことではなく、日常的なリスクとして企業を脅かしているという現実でした。

システム障害の発生頻度:「2〜3回」と「10回以上」が突出している

従業員数300名以上の企業550社を対象にした調査によると、過去3年間でシステム障害を1回以上経験した企業は約6割に上ります。そのうち「2〜3回発生」が25.6%、「10回以上発生」が15.3%と、複数回の障害を経験している企業は全体の49.1%という結果になりました。

この数字を見て、皆様はどう感じるでしょうか。「うちもそうだよ」と思った方も多いはずです。システム障害は「まれに起きる例外」ではなく、「一定の頻度で発生する」ことを前提とした運用体制が必要だということが、データからはっきりと見えてきます。

特に中小企業では、情シス担当者が少人数で運用しているケースが多く、障害発生時の対応負荷は想像以上に大きいものです。夜間や休日に障害が発生すれば、プライベートの時間を削って対応せざるを得ない――そんな経験をお持ちの方も少なくないでしょう。

実際、過去3年間で最も長かったダウンタイム(停止時間)を見ると、「1時間〜6時間未満」が42.8%と最多でした。「6時間〜24時間未満」も19.2%に達し、1時間以上のシステム停止を経験した企業は全体の7割超に及んでいます。顧客向けサービスの停止や社内業務の長時間停滞は、企業の信頼性に直結する深刻な問題です。

損失額は「1,000万円超」が4社に1社──1億円以上も6.3%

システム障害の影響は、単なる業務停止にとどまりません。経済的損失の規模を見ると、その深刻さがより明確になります。

過去3年間で発生した障害のうち、経済的損失額が最大であったケースについて尋ねたところ、「100万〜1,000万円未満」が23.4%と最多でした。しかし注目すべきは、「1,000万〜1億円未満」が19.2%、「1億円以上」が6.3%に上るという事実です。つまり、約4社に1社が1,000万円を超える損失を経験しており、100社に6社は1億円以上の被害を受けている計算になります。

この金額を見て、経営層にシステム投資の重要性を説明する際の説得材料になると感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。損失の内訳には、売上機会の逸失、顧客からの信頼低下、復旧作業のコスト、さらには取引先への補償などが含まれます。特にECサイトや予約システムなど、顧客接点となるシステムが停止した場合、その影響は計り知れません。

SNSで瞬時に拡散される現代では、「◯◯社のサイトがまた落ちてる」という投稿が評判の悪化につながり、長期的な顧客離れを招くリスクも無視できないところです。

障害原因の約3/4はソフト・ハード起因──対策のギャップが浮き彫りに

システムの稼働率(可用性)を高めるために実施している対策について、調査結果は興味深い傾向を示しました

人手による対応が前提になっている

最も多かったのは「監視・アラート強化/切替訓練」で59.4%、次いで「データ保護(バックアップ/スナップショット)」が52.1%でした。一方、「高可用性(High Availability)クラスター化」は41.9%にとどまっています。

この結果を見て、「まさにうちの会社だ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。多くの企業が「人手による対応」を前提とした運用型の対策に依存しているということが分かります。監視によって異常を早期発見し、担当者が手動で切り替え作業を行う──このアプローチは確かに重要ですが、夜間や休日、担当者不在時には対応が遅れるリスクが常に付きまといます。

HAクラスターの利用は4割にとどまる

一方、HAクラスターは障害発生時に自動的に予備系へ切り替える仕組みであり、人手を介さずに復旧できる点で優れています。調査によると、障害原因の約3/4はソフトウェア/ハードウェア起因であり、これらはHAクラスターによる冗長構成で抑制可能な領域です。にもかかわらず、導入率が4割強にとどまっている現状は、「対策の実施状況とリスクに大きなギャップがある」と言わざるを得ません。

導入のハードルとしては、初期投資やシステム構成の複雑化が挙げられますが、1,000万円を超える損失リスクと比較すれば、十分に検討の余地があるのではないでしょうか。

2026年の業界動向から見る「これから取るべき対策」

システム障害への備えを考える上で、業界全体の動向を把握しておくことは重要です。2025年から2026年にかけて、情報システム業界では大きな変化が起きています。これらのトレンドを理解し、自社の対策に活かしていきましょう。

AIとゼロトラストが変えるセキュリティの常識

2026年に入り、サイバーセキュリティ分野では「ゼロトラストアーキテクチャの本格普及」と「AI活用の急拡大」が大きなキーワードとなっています。

ゼットスケーラーやガートナーなど複数のセキュリティベンダーが発表した2026年のトレンド予測によると、ゼロトラストはもはや「バズワード」ではなく、企業が実際に運用すべき標準的なセキュリティモデルになりつつあるとのこと。クラウド中心のアーキテクチャが普及する中、「社内ネットワークだから安全」という前提は崩れ、すべてのアクセスを検証する仕組みが求められています。

さらに注目すべきは、AIエージェントの普及に伴う新たな課題です。2026年は、AIに対しても「認証とアクセス制御」を適用する必要性が高まっています。AIが自律的に業務を遂行する時代においては、AIそのものが攻撃の対象となるリスクも無視できません。情シス部門は、人間だけでなくAIのアイデンティティ管理にも対応する必要が出てきました。

また、2025年のセキュリティインシデントは前年比約1.4倍の165件に増加し、個人情報漏洩は約2,190万件に達したというデータもあります。サイバー攻撃の脅威が高まる中、システムの可用性を守ることは、単なる「業務継続」の問題ではなく、「企業の信頼性」そのものを守る取り組みと言えるでしょう。

クラウド移行とレガシーシステム刷新の加速

もう一つの大きな潮流が、「クラウド移行」と「レガシーシステムの刷新」です。特に自治体においては、2025年度末までにガバメントクラウドへの基幹業務移行が進められており、民間企業にとっても参考になる動きが見られます。

経済産業省が2018年に提唱した「2025年の崖」──古いシステムを使い続けることによるリスク──は、まさに現実のものとなりつつあります。レガシーシステムは保守コストが高く、技術者の確保も困難になっています。「この古いシステムを理解しているのは、あの人だけ」という属人化の問題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。

一方で、クラウドサービスへの移行は、初期投資を抑えつつ柔軟なスケーラビリティを実現できる選択肢として注目されています。ただし、2025年にはクラウド利用に伴うリスクも明確になりました。単純に「すべてクラウドに移せば解決」というわけではなく、オンプレミスとクラウドを組み合わせた「ハイブリッドクラウド戦略」への転換が求められています。

特にミッションクリティカルなシステムについては、冗長化を含めた設計が不可欠です。「クラウドなら勝手に冗長化されているだろう」と思い込んでいると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。

情シスが今すぐ始められる3つのアクション

では、中小企業の情シス担当者は、具体的に何から始めればよいのでしょうか。以下の3つのアクションが有効です。

①障害発生の「前提」に立った設計への転換

まずは、現行システムの可用性を評価し、障害発生時の影響範囲を明確にすることから始めましょう。「このシステムが止まったら、どの業務が止まるのか」「顧客への影響はどの程度か」を整理するだけでも、優先順位が見えてきます。

特に顧客接点となるシステムや基幹業務については、HAクラスターなどの自動復旧機能を検討する価値があります。初期投資はかかりますが、1,000万円を超える損失リスクと比較すれば、十分にペイする可能性が高いはずです。経営層への説明材料として、今回のサイオステクノロジーの調査データは大いに活用できるでしょう。

②ゼロトラストの部分的導入を検討

全社的なゼロトラスト導入は確かに大がかりですが、まずは重要システムへのアクセス制御強化から始めることができます。多要素認証(MFA)の導入、アクセス権限の定期見直し、ログ監視の強化など、できることから着実に進めていきましょう。

「完璧を目指すと何も始められない」という状況に陥りがちですが、小さな一歩から始めることが重要です。

③クラウド移行の段階的検討

いきなり全システムをクラウドに移すのではなく、まずは優先順位をつけて段階的に移行する計画を立てましょう。例えば、まずはバックアップをクラウドに保管する、次に開発・テスト環境をクラウドに移すなど、リスクを抑えながら進めることが重要です。

「失敗したら後戻りできない」という恐怖感があると思いますが、段階的なアプローチなら、途中で軌道修正も可能です。完璧な計画を待つよりも、小さく始めて経験を積んでいくことをお勧めします。

「止められないシステム」を支えるために

今回の調査結果が示したのは、システム障害が企業経営に直結する重大なリスクであるという現実です。過去3年間でほぼ半数の企業が複数回の障害を経験し、その最長ダウンタイムの7割超が1時間以上の停止に至っています。顧客向けサービスの停止や評判悪化、100万〜1億円超の損失に至るケースも確認され、もはや「うちは関係ない」と言える企業はほとんどないでしょう。一方で、障害原因の約3/4はソフトウェア/ハードウェア起因であり、HAクラスターによる冗長構成などで抑制可能な領域が大きいことも分かりました。にもかかわらず、冗長化の導入率は4割強にとどまり、対策の実施状況とリスクの間に大きなギャップが存在しています。

2026年の情報システム業界は、AIの活用拡大、ゼロトラストの普及、クラウド移行の加速という大きな転換期を迎えています。これらの動きは、中小企業にとっても無視できないトレンドです。サイバーセキュリティの脅威が高まる中、システムの可用性を守ることは、単なる「業務継続」の問題ではなく、「企業の信頼性」そのものを守る取り組みと言えます。

止められないシステム、止めてはいけない業務を支えるために、BCPの実効性を高め、事業継続の核を強化する。その重要な一手として、「HAクラスター」をはじめとした自動復旧・冗長化ソリューションの検討は、安定稼働と経営リスク低減のための戦略的投資です。今できることから、一歩ずつ始めていきましょう。

■著者ライター:犬を飼ってるゴリラ
大手IT企業に入社し、フロントエンド、PFシステムの開発に従事。その後、IaaSサービスなどの各種サービス事業開発に携わったのち、大手HR・販促事業会社に転職した。2018年にMBAを取得し、現在は大手金融企業のプロダクトオーナーなどを担っている。
 

(TEXT:犬を飼ってるゴリラ、編集:藤冨啓之)

 

特集|月曜日の朝にお送りする
「情シス『目』ニュース」

月曜日の朝にお送りする「情シス『目』ニュース」では、日々発信されるさまざまなトピックスを情シス・エンジニアの方々向けに「再解釈」した情報を掲載中。AI、働き方、経済など幅広いニュースをピックアップし、業務に役立つほか、つい同僚に話したくなる面白い話題まで身近で自分事化しやすくお届けします。

本特集はこちら

参照元

 

関連記事Related article

       

情シスのじかん公式InstagramInstagram

       

情シスのじかん公式Instagram

30秒で理解!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

掲載特集

close close