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“情シスが創るビジネスの明日”とは? IPA 登大遊氏/マキタ 高山百合子氏/コカ・コーラ Benny Lee 氏も登壇!BTCONJP 2025のキーパーソンに聞く注目セッションと2025年テーマへの想い

2025年11月15日(土)、一般社団法人日本ビジネステクノロジー協会が主催する「BTCONJP 2025」が、LINEヤフー株式会社本社にて開催されます。

BTCONJP(Business Technology Conference Japan)は、国内最大級である1万5000人以上のコーポレートエンジニアコミュニティ「情シスSlack」を母体とする有志によって運営されており、ITを「単なるツール」から「ビジネステクノロジー」へと昇華させ、日本の経済活動をアップデートすることを目的としたイベントです。

今回のテーマは「情シスが創るビジネスの明日」。企業のデジタル基盤を支える情シスが、業務効率化やセキュリティ対策はもちろん、DX推進や新たな価値創出の担い手となっている点に焦点が当てられています。

開催に先立ち、BTCONJPを主催する一般社団法人日本ビジネステクノロジー協会の理事である岡村 慎太郎 氏、引田 健一 氏、長谷川 真 氏に取材を行い、これまでの歩みや今年の企画意図、そして登壇テーマから見える業界トレンドについて伺いました。

■イベント概要:BTCONJP(Business Technology Conference Japan)2025

●会期:2025年11月15日(土)
●会場:LINEヤフー株式会社 本社(東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー17F)
●主催:一般社団法人日本ビジネステクノロジー協会
URL:https://btcon.jp/

         

現場の課題感が原点。情シスSlackの急成長とBTCONJP誕生の背景

――まずは自己紹介を兼ねて、情シスSlackやBTCONJPに携わるようになった経緯を伺いたいです。

岡村 慎太郎 氏(以下、敬称略)「私はこれまで、SIerや事業会社の情シス、SREなどを経てキャリアを積んできました。2018年ごろから個人的にも情シス関連のコミュニティやイベントに携わっていたのですが、当時は情シス同士が知見を共有できる場が少なく、交流文化が根付いていないと感じていました。そんな中で2019年に情シスSlackが立ち上がり、20名ほどの小規模なコミュニティの時期に参加し、管理者を志願することになります。その後コミュニティは急速に成長し、拡大していきました」

――情シスSlackが大きく成長していく中で、法人化やイベント開催にもつながっていったのですね。

岡村「はい。2022年には一般社団法人日本ビジネステクノロジー協会を設立し、2023年からBTCONJPを開催するようになりました。初回から大きな反響を得て、2024年には初のオフライン開催も実現しました。情シスSlackは現在1万5000人以上(2025年9月時点)の規模に達しており、国内最大級のコーポレートエンジニアコミュニティへと発展しています」

――引田さんも自己紹介をお願いいたします。

引田 健一 氏(以下、敬称略)「私は新卒でSIerに入り、官公庁案件に携わりながら、オフコンの保守やサーバーやクライアントの運用・プロジェクト設計を経験しました。その後、事業会社に移り、社内SEとして情シスに近い業務を担当。情シスSlackには立ち上げ初期から参加し、2021年頃からは管理者として運営にも関わるようになりました。岡村さん、長谷川さんらとともに社団法人化に踏み込み、現在のBTCONJPの基盤づくりにも携わっています」

――情シスコミュニティを支えるコアメンバーとして歩まれてきたのですね。最後に長谷川さんにもお伺いさせてください。

長谷川 真 氏(以下、敬称略)「私はもともとエンジニアとしてキャリアをスタートしましたが、スタートアップに転職した際に情シスの担当が不在であったため、自らが情シス業務を担うことになりました。当初は分からないことばかりで、Twitter(現X)で質問を投げかけながら周囲の助けを得ていたのですが、その経験から『情シスにも学び合うコミュニティが必要だ』と強く感じました。2019年4月に勉強会を開いた際に仲間が集まり、それをきっかけにSlackでの情報交換を始めたのが、情シスSlack立ち上げの原点です。立ち上げ直後から人が集まり始め、岡村さん、引田さんが加わってくださり、現在のような大規模コミュニティへと発展していきました」

――それぞれの経験や課題感が重なり合い、情シスSlackとBTCONJPの基盤が築かれてきたことがよくわかります。

情シスとスポンサーをつないだBTCONJP 2024の成果とは

「BTCONJP 2024」公式HPより画像引用

――昨年のBTCONJP 2024について、特に印象に残っている登壇や反響について教えていただけますか。

引田「特に印象的だったのはスポンサーエリアです。当初は『本当に人が集まってくれるのか』という不安もあったのですが、実際には多くの来場者が立ち寄り、スポンサーの方々と熱心に話し込む様子が見られました。後日、スポンサー企業の方から『大きな商談につながった』という声をいただいたのも大きな手応えでした。また、Ask The Speakerブースにも行列ができていて、登壇者と参加者が直接対話できる場としてしっかり機能していたのは良かったと思います」

――設置した施策が来場者の満足度とスポンサーの価値、両方を高めたのですね。

長谷川「私はスポンサー対応を担当していたため、当日はほとんどセッションを聞くことができませんでした。ただ、基調講演に多くの人が集まっていた様子は非常に印象的でした。終わってからスポンサーの方々からいただいた声も大きかったですね。特に『情シスSlackのメンバーが中心に参加しているので、リードの質が他のイベントとは段違いだった』『他の展示会よりも3倍ほどの価値があった』といった評価をいただけたのはありがたいことでした。スポンサーの方々にとっても参加の意義を実感いただけたのではないかと思います」

――参加者の熱量だけでなく、スポンサー側からの評価も高かったのですね。

岡村「印象に残っているのは、参加者とスポンサーの交流が非常に活発だった点です。あるスポンサー企業の方からは『大規模な展示会に3日間出展するのと同等のホットリード数を、BTCONJPでは1日で獲得できた』という評価もいただきました。通常の展示会では話しかけられたくないという参加者もいると思うのですが、BTCONJPは来場者が自ら積極的に話をしに行く雰囲気があり、双方にとってメリットの大きい場になっていたと感じます。私たちが狙っていた『情シスとスポンサー双方にとって意味のある場を作る』という考えが実現できていたことを実感しました」

※「BTCONJP 2024」の参加レポートは以下からご覧いただけます。
ビジネスとテクノロジーの融合が未来を拓く「BTCONJP 2024 情シスカンファレンス」参加レポート

「情シスが創るビジネスの明日」――テーマ決定の舞台裏

「BTCONJP」公式HPより画像引用

――今年のBTCONJPでは「情シスが創るビジネスの明日」というテーマが掲げられました。設定の背景について教えてください。

岡村「今回のテーマは、運営スタッフ全員で意見を出し合いながら決めたものです。平日夜に集まり、メンバーで議論を重ねました。私は、単にどのツールを導入すればよいかといった技術論にとどまるのではなく、情報システムをビジネスの成果にどう結びつけるかを主眼にすべきだと考えています。情シスは本来、ビジネスを後押しするために存在する部門であり、働く人々もその視座を持つべきだと思います。そうした思いから、情シスがビジネスをけん引する姿を打ち出せるテーマが望ましいのではと提案しました。スタッフ間で寄せられた複数のキーワードをつなぎ合わせた結果、現在の表現に至ったという経緯です」

――運営メンバー全員の知恵を持ち寄ったテーマ設定だったのですね。

長谷川「はい。ホームページに載っている通り、運営コアメンバーは14名います。各自が今注目しているテーマを宿題として持ち寄り、AIや働き方基盤など幅広い意見を出しました。その中で『情シスが創るビジネスの明日』というフレーズが出た際、『これだ』と共感したのを覚えています。情シスの役割は、単なる裏方からビジネスの成長を支える中核へと変わってきています。テーマにはその変化を象徴させる意図が込められていると感じました」

「BTCONJP」公式HPより画像引用
BTCONJP 2025 運営コアメンバー

――たしかに、情シスの役割は時代とともに大きく変わりつつあります。

引田「昨年まではテーマを明確に掲げていなかったのですが、今回はあえてメッセージを打ち出すことで、企画を組み立てやすくなると考えました。加えて、情シスだけでなくセキュリティやDX推進の担当者など、他部門の方々にも広く参加していただきたい思いがあります。情シスはいわゆるコストセンターと見なされがちですが、時代とともに営業活動や事業推進を間接的に支援できる存在になっていると感じています。そうした側面を可視化し、ビジネスと情シスの関係性をより強めていきたいです」

採択テーマの傾向と見えてきた業界トレンド

――CfP(Call for Proposal)=登壇者募集について、応募状況や傾向を教えてください。

引田「ありがたいことに、今年は例年を大きく上回る40件近い応募がありました。テーマを明確に掲げた影響もあるのかもしれませんが、幅広い分野から多様な提案をいただけたのは印象的でした。特定の領域、たとえばAIに偏ることなく、それぞれの登壇者が日々の業務を通じて取り組んでいる課題や成果を持ち寄ってくれた印象です。情シスという職種の広がりをそのまま反映するようなバリエーションであり、このイベントが現場の実践知を集める場として定着してきたと感じています」

――応募内容には、これまでとは違った変化も見られたのですね。

長谷川「私が印象に残っているのは、単なる導入報告にとどまらず、取り組みがどのように自社の課題解決につながったのかといった実体験に基づく発表が増えてきたことです。たとえば『ツールを試してみた』というレベルから一歩進み、実際に組織の課題をどう乗り越えたのか、どのように業務を改善したのかが語られるようになっています。これはイベントを継続してきた成果でもあり、登壇内容の深みが増してきた証拠といえるのではないでしょうか。コミュニティの規模拡大に伴い、経験豊富な参加者も増えたことで、発表のレベル感が一段上がったように思います」

――応募が増えることで、選考の観点も重要になってきますね。

岡村「はい。募集要項では『情シスに関わることであれば自由に応募可能』という打ち出し方にしていましたが、採択基準ではビジネスにどのように寄与しているかを重視しました。技術的に有用な取り組みであっても、それがその企業の事業特性やビジネス課題にどう結びついているかが明示されていない場合、残念ながら採択には至らない傾向がありました」

「BTCONJP」公式HPより、一部タイムスケジュールを画像引用
スケジュールの全容は公式HPをご覧ください

※最終的に決定したセッションは「BTCONJP」公式HPで公開中です。

――応募の傾向から、業界全体の関心も見えてきたのではないでしょうか。

引田「やはりAI活用は、多くの企業で共通して注目されているテーマだと感じます。さらに、AI×iPaaSを活用した自動化の話も耳にするようになってきました」

長谷川「少し前まではID基盤、デバイス管理といったテーマが主に取り上げられていました。しかし最近では、それらの足元の整備を一通り終えた後の『次に何をすべきか』という問いに直面するケースが増えてきたと感じます。セキュリティや基盤管理は依然として重要課題である一方、その先にある新たな施策を模索する動きが広がりつつあります」

トップランナーが語る視点。登 大遊 氏、高山 百合子 氏、Benny Lee 氏のセッション

――今年のBTCONJPでは、どのようなキーセッションが予定されているのでしょうか。

岡村「現時点(9月2日取材時点)で発表している中でまずご紹介したいのが、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)産業サイバーセキュリティセンターでサイバー技術研究室長を務める登 大遊 氏のセッションです。 まだテーマ自体は確定していませんが、これまで常に示唆に富んだお話をされてきた方なので、今回も大いに期待できると思います」

※登 大遊 氏の基調講演に関するプレスリリースは以下からご覧いただけます。
登大遊氏が「Business Technology Conference Japan (BTCONJP) 2025」基調講演に登壇決定しました

岡村「次に注目していただきたいのが、船舶エンジン製造業を展開する株式会社マキタの高山 百合子 氏のセッションです。

香川を拠点に、サプライチェーンも含めてIT導入を推進されている方で、地方の大規模製造業がどのようにビジネスとITを結びつけているか、そのリアルが語られるはずです。大企業でも中小企業でも共通する課題が見えてくると思いますし、泥臭くも本質的な取り組みから多くの示唆を得ていただけるでしょう」

※高山 百合子 氏の基調講演に関するプレスリリースは以下からご覧いただけます。
高山百合子氏が「Business Technology Conference Japan (BTCONJP) 2025」ゲストスピーカーに登壇決定しました

――世界的な事例も紹介されるそうですね。

岡村「はい。コカ・コーラ社のテクノロジー&ストラテジックパートナーシップ部門のシニアマネージャーを務めるBenny Lee 氏が登壇されます。コカ・コーラ社を支えるAI活用やローカライゼーション、ブランドガバナンスといったテーマは、情シスにとっても大いに参考になるはずです。世界規模のAI活用事例を知っていただくきっかけになればと期待しています。BennyLee 氏 によるBTCONJP2025講演告知動画も、ぜひご覧ください」

編集部補足:Benny Lee 氏は2014年にコカ・コーラ社へ入社し、同社のAI戦略の立案や、イノベーション推進を主導してきた存在です。デザイン分野で10年以上の経験を持ち、これまで20以上の製品を市場に送り出し、「没入感のある消費者体験」を設計してきました。
139年の歴史を誇る世界的ブランド「コカ・コーラ」が、どのようにAIを実験段階から全社レベルの活用へと発展させ、消費者との関係を深めてきたのか。今回のセッション「コカ・コーラを支えるAIを活用したローカライゼーションとブランドガバナンス(原題:Coca-Cola AI at scale: Transforming workflows and accelerating creativity.)」では、その具体的な事例が紹介される予定です。

――セッション以外の見どころについてはいかがでしょうか。

引田「詳細は今後のリリースであらためて紹介しますが、会場では参加者同士が自然に交流できるような仕掛けを複数準備しています。スポンサーや参加者との会話が生まれるきっかけづくりを大切にしており、学びとつながりの双方を持ち帰れる場になるはずです」

BTCONJPをより有意義に楽しむために

――最後に、参加を検討している方々へのメッセージをお願いいたします。

引田「セッションそのものはもちろん楽しんでいただけると思いますが、それ以上に注目いただきたいのは会場内での交流です。今回のBTCONJP 2025では、参加者同士が自然に話しかけられる仕掛けを多数準備しています。普段は自分から声をかけるのが難しいという方でも、施策を通じて話しかけられる機会が増えると思います。その際にはぜひ一歩踏み出してみてください!ちょっとした会話から横のつながりが広がり、役立つ話が得られるはずです」

長谷川「セッションに参加すること自体は自然なことですが、このイベントの背景には情シスSlackのコミュニティの存在があります。今回ご協賛いただいている企業様は、単なるリード獲得を目的にしているのではなく、『情シス業界を盛り上げたい』という強い思いを持ってくださっています。ぜひスポンサーブースにも足を運んでみてください!そこから新しい発見や学びが生まれるはずです」

岡村「当日はセッション以外にも『情シスカフェ』など、悩みを気軽に相談できる場を設ける予定です。情シス界隈で著名な方々が立ってくださり、現場で抱えている課題を直接話せる機会になるはずです。こうした企画は順次Xや情シスSlack、プレスリリースなどで告知していきますので、ぜひフォローしてチェックいただければと思います」

――当日参加が難しい方への配慮もあると伺いました。

岡村「はい。今回は基調講演を含め、主要なセッションをアーカイブ配信する予定です。配信期間は1週間程度を想定しており、当日どうしても参加できない方も後日視聴が可能です。ただし視聴にはオンラインチケットの事前購入が必要になりますので、ぜひ早めにご登録ください」

※BTCONJP 2025 のチケット購入は以下からどうぞ!
Business Technology Conference Japan 2025

「BTCONJP」公式HPより画像引用

「情シスのじかん」もブロンズスポンサーの一員として、情シスの挑戦を応援しています!

執筆:七瀬ユウ
新卒で大手Slerに入社し、基幹システムの開発・プロジェクトマネジメント業務に従事。WEB広告企業でセールスライターの経験を経て、2021年にWebライターとして独立。オウンドメディアのSEO記事制作や、SNS運用代行、Kindleプロデュースなどを担う。情シスのじかんでは企画立案から執筆、編集を担当。
 
 

2025年11月15日(土)開催!!
BTCONJP 2025

「BTCONJP」公式HPより画像引用

2025年11月15日(土)、LINEヤフー株式会社 本社(東京ガーデンテラス紀尾井町)にて「BTCONJP(Business Technology Conference Japan)2025」を開催します。

「情シスが創るビジネスの明日」をテーマに、セッションや交流施策を通じて、最新の業界トレンドと学びを共有する一日。情シスの未来をともに描く場に、ぜひご参加ください。

イベントページはこちら
 

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