ChatworkやSlackといったチャットツールには、チャット機能やタスク管理機能、ファイル共有機能、通話機能など、ビジネスコミュニケーションに役立つ便利な機能が備わっています。そのため、自社の標準的なコミュニケーションツールとして採用している企業も少なくないでしょう。
しかし、チャットツールは障害が発生することも少なくありません。ここ最近の事例で言えば、2025年4月26日にChatworkでシステム障害が発生。アクセスが不安定になる状況が断続的に続きました。また、2025年5月13日にSlackで障害が発生。クライアントが起動しない、メッセージを送信できないなどのトラブルがありました。
チャットツール障害は、なぜ発生してしまうのでしょうか。主に次のような原因が挙げられます。
・アクセス集中によるサーバーダウン
・サイバー攻撃
・外部サービスとの連携ミス
・ソフトウェアアップデートの不具合
・プログラム変更やシステム構成変更による不具合
・インフラの物理的故障
さまざまな原因がありますが、「ユーザー側でコントロールすることが難しい」という共通点があります。
情シス担当者として、チャットツール障害にどう備えればよいのでしょうか。考慮すべき主なポイントとして、次の3つが挙げられます。
チャットワーク障害が起きた際、社員は混乱します。
「使えないのは自分のパソコンだけか?」
「自社の問題か? それともサービス側の問題か?」
「いつごろ復旧するのか?」
こうした不安・疑問の声を放置すると、社内に誤情報が飛び交い、さらなる混乱を招きかねません。本来業務に充てるべき貴重な時間も無駄にしてしまいます。情シス担当者に求められるのは、「正確な障害情報の迅速な把握」と「社員が必要とする情報の迅速な展開」です。
多くのチャットツールは、障害の状況を、公式ステータスページやSNSアカウントなどで公開しています。これらの情報源を日常的にチェックしておくことで、障害の兆候や発生をいち早く把握することができます。
とはいえ、日常的に人手でチェックする方法は現実的ではありません。また、少しでも早く障害情報を把握したいというニーズもあるでしょう。そのような場合に便利なのが、DowndetectorやUptimeRobot、Pingdomなどの監視ツールです。特定のサービスの障害状況を自動で検知し、即座にユーザーに通知する仕組みを備えています。
さらに、障害発生時に迅速に社内展開できるよう、メッセージのテンプレートを用意しておくことも効果的です。
チャットツールが利用できなくなった際、社員は「では、どのようにしてコミュニケーションをとればよいのだろう?」という疑問を抱えます。そのため、あらかじめ代替コミュニケーション手段について認識をあわせておきましょう。これだけでも大きな混乱の防止につながります。
具体的な手段として、次のようなものが挙げられます。
・他のチャットツール
・メール
・電話
・イントラネット
・社内SNS
選定ポイントとしては、操作性、履歴の保存性、検索性などが挙げられます。
業務を進めるために必要な情報がチャットツールにしか存在しない――このような状況になっていないでしょうか。このような状況では、チャットツール障害が、そのまま業務停止に直結します。
チャットツールが利用できない状況でも、必要な情報にアクセスできるよう、あらかじめ情報環境を整備しておきましょう。また、必要に応じて、チャットツール内にあるデータのバックアップも行うようにしましょう。
チャットツールは非常に便利なコミュニケーションツールですが、障害により一時的に使用できなくなることは珍しいことではありません。そのため、情シス担当者としては、「チャットツール障害は必ず起こるもの」という前提に立ち、日頃から備えておく必要があります。
本記事では、次の3つのポイントを挙げました。
・障害情報の把握・社内展開体制の整備
・代替コミュニケーション手段の検討・共有
・情報環境の整備
チャットツール障害の影響を最小限に抑える上で、本記事の内容をお役立てください。
著者:松下 一輝
千葉大学大学院修了後、大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを担当する部署にて、業務システムやWebアプリケーションの設計・開発に携わる。次第にプレゼン能力が評価されるようになり、製品説明や事業戦略紹介などのプレゼンも任されるように。やがて「伝える」ことへの関心が高まり、フリーのライター/ジャーナリストに転身。現在、IT分野やビジネス分野を中心に記事を執筆している。
(TEXT:松下一輝、編集:藤冨啓之)
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